2015年6月19日金曜日

第1124話 ジョージのお次はジョルジュ (その1)

幸薄そうなハーフの小学生、ジョージと焼肉を食べた数日後。
本郷の東京大学で所用を済ませ、
弥生坂を下りきって根津の交差点である。
ときは正午過ぎ、まさに昼めしどきだ。
 
リピーターではなかったJ.C.だが近年はリピート率が上がっている。
身を置いて心安らぐ場所がほしくなったのだろう。
行動範囲も狭まってきたし、
寄る年波というヤツであろうか・・・。
 
行きつけの日本そば店、池之端の「新ふじ」までは徒歩3分。
この日は午後にもミッションを抱えており、
昼から飲むつもりは毛頭ない。
もりそばか中華そばをサクッとやるだけでよいのだ。
 
ちなみに「新ふじ」の中華そばはなかなかである。
子どもの頃からの経験に基づけば、
日本そば屋における中華そばは当たりの確率が高い。
概して支那そばに源流を求める古典的なスタイルが多く、
根っからのラーメン好きを大きく裏切ることがない。
 
近頃流行りの煮干しの匂いがプンプンするヤツ、
いや、煮干しだけならまだしも魚粉の悪臭漂うヤツ、
挙句の果てはさらに魚粉をぶっ掛けちゃうってんだから
もう人間の食いモンではないわな。
魚粉なんてもともと作物のための肥料じゃないの。
われわれ人類は生き物であって、田畑(でんばた)には非ず。
 
でもって「新ふじ」に到着。
ありゃりゃ、珍しくも店先に3人の客が順番を待っている。
それもそうだヨ、一番混雑する時間帯だもんネ。
こりゃ、中を覗くまでもあるまい。
即、あきらめた。
 
このまま不忍通りを真っ直ぐ行って湯島に向かうか、
不忍池の遊歩道を突っ切って上野方面に抜けるか、
しばらく思案をめぐらす。
決断して今来た道を引き返すことにする。
 
根津の交差点を右折し、言問通りに入ってすぐ、
入店したのは「中華オトメ」である。
ここ数年、料理人が替わりでもしたのだろうか、
味が落ちている町の中華屋ながら
久しぶりに五目焼きそばを食べる気になっていた。
 
すると、ここでも空席が見つからない。
根津神社のつつじ祭りはとっくに終わったのに
界隈は熟年層が押しかけてきて
夫婦仲良く揃い、散策にいそしむ姿が目立つ。
ご同慶の至りなれど、いや、マイッたぞなもし。
 
またもや「オトメ」をあきらめ、周辺の物色に及ぶ。
交差点にほど近く、献立を記した立て看板に目がとまった。
 
=つづく=