2015年6月17日水曜日

第1122話 昼下がりのジョージ (その1)

いよいよW杯ロシア大会の予選がその火ぶたを切った。
昨夜の対シンガポール戦、
GKマフブートは敵ながらあっぱれであった。
あれはもう神がかりというほかはない。
いや、しかし、あんなシンガポールの雄姿を見るのは初めてだぜ。

いずれにしても日本の1位通過は
絶対に動かないから悲観することなど何もない。
むしろJ.C.にとってシンガポールは
ニューヨークと並ぶ第二のふるさとにつき、
心から彼らの健闘を祝福したいくらいなのだ。

それはそれとして数日前である。
ひょんなことから小学生の男の子と昼食をともにすることになった。
それも二人だけで―。
話せばとてつもなく長くなるし、
関係者のプライバシーにふれざるを得ないので詳細は省く。

とにかく日本人の父とアジア人の母を持つ少年の名はジョージ。
身柄を受け渡されたのは文京区・千石の大鳥神社前だ。
ついでだから、と言うのもバチ当たりなハナシだが
神社に賽して手も合わせた。

そのあとでジョージにフィッシュ or ミートを問い質すと、
か細い声でミートを指定したではないか―。
ふ~ん、肉ねェ・・・。
近頃の日本のガキどもとまったく同じじゃないか。

さてさて、年端もいかないハーフの男児が肉を欲している。
何をごちそうしたら歓ばれるものかのう。
大鳥商店街を突っ切って白山通り、JR巣鴨方面に進路をとった。

道すがら、もう一度訊いてみる。
「チキン・ポーク・ビーフ、キミの好きなのはいったいどれだい?」―
まあ妥当な質問であろうヨ。
またもや、か細い声が返ってきてビーフだとサ。

ふ~ん、ビーフねェ・・・。
ここでステーキというわけにもいくまい。
子どもにそんなぜいたくはさせられない。
第一、こちらのフトコロが激しく傷むじゃないか。
となれば、ハンバーグあたりで誤魔化すしかないか―。
う~ん、ハンバーグかァ。

JR巣鴨駅前の、その名も巣鴨橋を渡った。
橋の下に川は流れていない。
山手線の電車が走っている。
今、山手線の内側から外側へ出たわけだ。

道のはす向こう、交番の先にセブンイレブンが見える。
その上に焼肉屋の看板があった。
そうだ! これでいくしかないじゃん!

=つづく=