2015年8月17日月曜日

第1165話 池波翁の「銀座日記」 (その12)

池波正太郎の日記を読み進めていくと、
体力・気力の衰えが手に取るように判る。
この頃、文字通り、昭和を象徴する人物が世を去った。

(冬ごもり)

ついに、天皇が崩御され、平成元年の新年となったが、
自分に元気のないことは旧年通りで
二枚、三枚の原稿を書くのが、やっとのことだ。

大相撲、千秋楽にて、北勝海と旭富士の優勝決定戦。
北勝海が勝つ。
この人は三ヶ月の休場後に、この成績をあげた。
えらいものなり。
毎日、家にこもったまま、何処へも出ない。
これはよくないとおもうのだが、
いざとなると面倒になってしまい、炬燵(こたつ)へもぐりこむと、
そのまま、夕景までうごかない。
隣家の御主人もそうだ。
この人は「冬ごもり」と称して、毎年、
春が来るまでは庭にも出て来ない。

家にこもりっきりになって外出を渋るようになると、
もうその人の行く末は長いことはない。
面倒、億劫というより、外へ出てゆくことが怖くなってしまうのだ。

池波翁とスポーツとはイメージが重ならないが
相撲に限らず、プロ野球もそこそこTV観戦している。
振り返れば、昭和天皇も大の大相撲ファンであった。

(訃報つぎつぎに)

テレビも新聞も、連日、
リクルート事件と税金問題を取りあげていて、もう飽きた。
日本の戦後で、もっとも質が下落したのは政治家だ。
それは企業の発展と傲慢に足なみをそろえて下落してしまった。
私は大平前首相のころまでは、自民党に希望をつないでいたが、
いまは、投票する気にもなれない。
そうかといって、野党はいずれも頼りなく、相変わらず、
反対のための反対を空虚に叫びつづけているのみだ。
午後から神田へ行き、散髪、すぐに帰宅。
皇居周辺の桜花は、すっかり咲きそろって、
陽気も暖かくなった。
昨日あたりから体調もよくなり、血圧も下がったが、
久しぶりに私を見る人は「すっかり、おとろえた」と、おもうらしい。
床屋で「少し禿げてきたから、短くしてもらおうかな」といったら
「とんでもない、こんなの禿のうちに入りませんよ」と、
はげましてくれた。

本当だ、政治家についてはまさしく翁の言う通りですな。
野党もまたしかり。
それにしてもハハハ、
”禿”をハゲまされるっていうのもねェ。

=つづく=