2015年10月6日火曜日

第1201話 歩き続けて3万歩 (その1)

婆ちゃんの原宿で二婆のささやきを聴いたあとである。
西新宿から馬場・雑司ヶ谷・茗荷谷・千石を経由して
巣鴨の街にやって来たのだが、その日はそこで終わらなかった。

巣鴨には東京中央卸売市場の豊島市場がある。
ここは築地、あるいは大田や足立の各市場と異なり、
鮮魚部がないから中に足を踏み入れても面白くない。

代わりに隣りの染井霊園へ向かった。
都心の墓地としては最大の青山には遠く及ばず、
谷中ほど広くもないが、雑司ヶ谷と同規模だ。
とにかく中に入ったのは初めて―。

染井村は江戸の昔からたくさんの植木屋があった土地。
現代では日本の国花・サクラの代表品種、
ソメイヨシノ発祥の地として全国にその名を知られている。

墓地内を散策して感じた。
どうも管理が行き届いていない。
整理整頓に問題があるのだ。
管理所脇の男子トイレに立ち寄ってビックリした。
あまりの不潔さに出るものも引っ込む始末。

人目をしのぶことはじゅうぶんにできるが
墓場で立ちションはバチ当たりもいいところ。
風雲急を告げているわけでもないから
ここは我慢の巻であった。

JR駒込駅方面に歩いていて、本郷高校の前を通過した。
おや?何だって染井の里に本郷高校があるんだろう。
高校時代、サッカーの試合で対戦したことがあったが
こんな場所にあるとは夢にも思わなかった。
確かに本郷通りが近くを走っているけれど、
東京大学のある本郷7丁目までは相当の距離がある。

駒込駅前から南に走る商店街、アザレア通りを抜け、
田端銀座に到着。
ここは下町ではないが、昭和の匂いが濃厚に残っており、
都内有数のマイ・フェイヴァリット商店街なのだ。
田端銀座を隅から隅まで行ったり来たり。
田端とはいえ、銀ブラは銀ブラである。

ストリートの端っこに天然酵母使用の「パンのかわむら」がある。
店頭に並んでいるのはほとんど食パンのみで
真四角のスタンダードと山型の英国風の2種類だが
店主がすすめるのはスタンダードのほう。
オススメだけあってコレが実に美味しい。
生で食べてもトーストにしても常用するPascoの上をいく。
何でも小売りよりホテルや喫茶店への卸しが主流らしい。

真四角の食パンを1斤買い求め、
その日はなおも歩き続けたのでした。

=つづく=

「パンのかわむら」
 東京都北区田端4-3-11
  03-5834-9877