2015年10月23日金曜日

第1214話 京成沿線を歩き続けて(その6)

江戸川区・小岩の居酒屋「江戸政」のカウンターにいる。
今、江戸川区・小岩と記してハタと思いあたった。
豊島区・大塚の酒亭「江戸一」は
それこそ江戸(東京)一番の秀にして麗なる名店だが
「江戸政」の”江戸”は東京ではなく江戸川区を指すのではないか!
おそらくそうであろうヨ。
”政”は店主の名前が政吉サンだったりして―。

おっとホンビノスであった。
この貝について語らねばならない。
タンカーや貨物船が目的地に寄港して任務を終えたあと、
母港に帰る際、積み込む荷がない場合は
船の重心が上がってしまいって不安定になる。
その状態を回避するため、
大量の海水を汲み上げて荷の代わりとするのだが
これをバラスト水と呼ぶ。

実はホンビノスのヤツ、
バラスト水に紛れ込んで太平洋横断を果たした。
ふるさとのイーストコーストからはるか遠く、
東京湾に打ち棄てられた仲間が繁殖して
市場に流通するほど数を増やしたってんだから
まことに大したヤツらよのぉ!
近年では大阪湾まで勢力を拡大しているらしい。

ここでことわっておくが
ホンビノスはけして大あさりなんかではない。
れっきとしたとしたはまぐりの仲間だ。

実はJ.C.、彼らとのつき合いは長いものがある。
初顔合わせは1987年、NYKに赴任した年。
あちらのオイスターバーはどこでも
生がきだけでなく、生はまぐりを食べさせるが
実に美味しいもので大きな驚きであった。
生のはまぐりを食べる習慣がに日本にはまったくないからネ。

サカナには小肌・すずき・ぶりなど、いわゆる出世魚が少なくない。
ホンビノスは言わば出世貝であり、
リトルネック→トップネック→チェリーストーン→チャウダークラムと
その名を変えてゆくものの、
一般にはリトルネックとチェリーストーンが認知されている。

ニューヨーク滞在時は別種と信じていたが
同種と知ったのはつい最近のこと。
それ以前はてっきり真がきと岩がきみたいなものだと思っていた。
好みの問題ながら食味はリトルネックのほうがはるかによい。
デリケートにして歯応え、舌ざわりもなめらかなのだ。
それこそ真がきと岩がきほどの差がある。

でもって「江戸政」の大あさりことホンビノス。
これはアカンかった。
熱が通り過ぎたせいでかなり硬かった。
他のつまみを物色しつつ、ビールから酎ハイに切り替えたのだった。

=つづく=