2015年10月27日火曜日

第1216話 京成沿線を歩き続けて(その8)

かつては東京パレスなる一大歓楽郷が存在した小岩。
東京パレスのエントランスには”青春の殿堂”と記された、
門柱が老若のオトコたちを迎えていたが
その実は赤線地帯、というより、
赤線宿舎か赤線団地といった態を成していた。
大きなダンスホールまで擁していたのだ。

その小岩の「江戸政」ですだちハイを飲み干したあと、
いよいよ名代のコーヒーハイをいただく。
生まれて初めて飲むコーヒー酎ハイである。
底にはコーヒー豆が沈んでいる
 ♪ これでおよしよ
   そんなに強くないのに
   酔えば酔うほど 淋しくなってしまう
   涙ぐんで そっと時計をかくした
   女ごころ 痛いほどわかる
   指で包んだ まるいグラスの底にも
   残り少ない 夢がゆれている  ♪
       (作詞:山口洋子)

裕次郎のブランデーグラスの底には夢がゆれているが
J,Cの酎ハイグラスの底にはコーヒー豆が沈んでいる。
グビリツ。
ふーん、悪くないねエ。

ティータイムにはコーヒーより紅茶を好む身ながら
コーヒー酎ハイはなかなかけっこう。
これにヒントを得て今度は自宅で紅茶ハイでも作ってみるか。

再び壁を見上げてつまみの物色に入る。
入ったところで食指が動いたのは入豚(いりぶた)なる一品。
下町では時折り目にする簡単な料理だ。
豚の小間切れやバラ肉を玉ねぎとともに炒め、
ケチャップ味で仕上げるものだ。

通常は炒り豚の字が当てられる。
なぜかここでは入豚、初めて目にした。
さっそくオーダーしてみる。
オーソドックスにケチャップ味
浅草の「水口食堂」、十条の「天将」、
みなケチャップ仕上げで記憶をたどると、
大島(おおじま)の「ゑびす」だけが塩味だったかな?
そこそこ美味しくいただいてのお勘定は2500円でオツリがきた。

京成小岩へ歩き戻り、青砥の駅で京成押上線に乗り換え、
下車したのは浅草橋である。
久方ぶりに以前行き着けた「P」という小料理屋に立ち寄った。
まぐろの山かけでキリンの生と、蔵の師魂のオンザロックを。
これにて長かった本日の打ち止めであります。

=おしまい=

「江戸政」
 東京都江戸川区西小岩1-30-6
 03-3672-1035