2015年10月13日火曜日

第1206話 王子で味わう ツブとブツ (その3)

大衆酒場としては例外的にして
模範的に天井の高い、王子の「山田屋」にいる。
卓と卓との間隔も広めにとってあり、居心地がよい。

中ジョッキを飲み干したわれわれは
瓶ビールに切り替えることにした。
瓶も銘柄はキリンのみだが
こちらはラガーと一番搾りの2種類が用意されている。

ずっと以前は米国のバドワイザーにも似たクセが
気になって仕方がなかった一番搾りだが
いつの間にやら改善されて今はわりとスッキリ。
むしろ重たいラガーより飲み口がよろしい。
もっともこういうものは好みの問題だけどネ。

瓶ビールは大きな冷蔵庫まで客が勝手に取りにいく。
栓を抜くのもセルフだが周りに栓抜きがが見当たらない。
これは壁に備え付けのオープナーに
ボトルの頭を差し込んで王冠を外すタイプで
近頃、ほとんどヨソでは見掛けなくなった。
レトロな昭和の遺産と言えよう。

あじ酢、ツブ貝刺しと来て、お次はほたるいかの沖漬け。
淡白なつまみが続いたから
多少パンチの利いた塩辛い味を選んだわけだ。
となれば、欲しくなるのは日本酒だろう。

「山田屋」の品揃えは八重壽と白鷹。
小徳利は、八重壽が250円、白鷹青松が280円、黒松が310円。
300ml入りの生酒は、八重壽生貯蔵酒が410円、
白鷹吟醸生貯蔵酒が700円である。

八重壽は渋谷の「丸木屋酒店」で
白鷹は大塚の「江戸一」で
それぞれなじみがあるから安心して頼める。
清酒の出たとこ勝負はときとして大きくハズすリスクが伴うからネ。
相方・T栄サンの手前、見栄を張ったわけでもないが
ちょいとおごって白鷹の吟醸生を所望した。
ついでに本日のおすすめからかんぱち刺しも―。

入店時には空席のほうが多かったのに
押し寄せた呑ん兵衛たちで大方のテーブルが埋まった。
そばに10人ほどの団体客、それも世代の開きはあるものの、
オトコばっかりの野郎どもグループが陣を取った。
紅一点の存在すら見とめられない。

オスとメスとが真っ二つに分かれて行動する後進性を
いまだに維持している先進国は日本のほかに一国としてない。
恥ずるべし。

おまけに何の集まりか知らないが
呑むほどに酔うほどにやかましさが倍々アップのていたらく、
いや、マイッたぞなもし。

=つづく=