2018年5月2日水曜日

第1862話 「男女6人ピザ物語」 (その3)

湯島の「アランジャルシ」にて
その名もピッツァ・アランジャルシをいただこうとしている。
6ピースに切られた円盤上には
水牛のモッツレッラ、プチトマト、ルッコラが盛られていた。
牛乳のチーズではなく水牛乳、バジルの代わりにルッコラ。
マルゲリータのプレミアム・ヴァージョンといった景色だ。

サルデーニャのDOCワイン、
カンノナウが相性の良さを見せている。
余韻にネッビオーロにも似た匂いを
嗅ぎとったような思いがしたのは気のせいだろうか―。

3枚目のピッツァはルナ・ロッサ、直訳すれば赤い月。
その名の示す通り、ふくらみを持つ半月形をしている。
イタリア各地やニューヨークあたりでよく見る、
三日月形のカルツォーネに酷似しているが
こちらは半月により近い。
読者は巨大な餃子を思い浮かべてください。

ルナ・ロッサのフィリングはマルゲリータ同様に
モッツァレッラとトマトだ。
いわば二つに折りたたんだマルゲリータである。
サンドイッチに例えるなら片面ブレッドのオープンサンドを
両面ブレッドのオーソドックスなサンドにしたカタチ。
もっともピッツァはオープンサンドのようなものだが
サンドイッチ好きのニューヨーカーは
ピッツァを2枚重ねにして食べる輩があとを絶たない。

最後を飾る4枚目はクワトロ・フォルマッジ。
4種のチーズの競演である。
パルミジャーノ、ゴルゴンゾーラ、モッツァレッラに
あと1種はおそらくリコッタだろうか。
これは好みで蜂蜜と一緒に味わうけれど、
J.C.は赤ワインに悪影響をもたらす蜂蜜は使わない。
蜂蜜のせいで優良赤ワインがダメージを受けることを
俗にハニー・トラップと言う。

みなさんかなりお腹が膨れてきたものの、
せっかくだからとパスタを追加する。
ヴェスヴィオなるカタツムリに似た形状のパスタを
異なる2種のソースでお願いした。

ヴェスヴィオは西暦79年の噴火で
ポンペイの街を壊滅させたあの火山。
あまりカタチは似てないが
そんなイメージで造形されたようだ。

1皿目はホタルイカのトマトソース。
ホタルの持ち味が発揮されずに、ちと残念。
2皿目はナポリのジェノヴェーゼ。
東京の大阪風みたいなヘンテコなネーミングだ。
こちらもパッとせず、ヴェスヴィオは大量に売れ残った。

当夜のパンチDEデートの出席者の中にも
売れ残っているのが約数名。
これは当然の帰結でありましょう。

=おしまい=

「アランジャルシ」
 東京都文京区湯島4-6-17
 03-3812-9616