2018年5月11日金曜日

第1869話 三河島で酌交

読者のK野サンと初めて一酌に及ぶこととなった。
待合せはJR常磐線・三河島駅改札である。
われわれの世代は三河島と聞くと1962年に発生した、
国鉄の多重事故を思い出さざるを得ない。
死者160人に及ぶ大惨事ながら、ここでは多くを語らない。

メールの交換から飲む機会を得たK野サンと
約束の18時に先んずること1時間。
日暮里から歩いて三河島に到着した。
ここは城東のコリアンタウンでもある。
焼肉店を利用したが居酒屋で飲んだことはない。

狙いを定めた「もつ焼き 三朝」は
惨事の起こった駅高架下にポツリとあった。
若くはないオニイさん、あるいはフケてはいないオジさん。
そんな感じの店主が独りで切盛りしている。

アサヒの大瓶は明らかに冷えがたりない。
カシラの塩とレバのタレは水準以上。
タレで頼んだ、ゆでシロはシロというよりテッポウだ。
下茹でが施してあり、食感がよろしい。
ハナシの種にたこ焼きのおでんを所望してみたが
これは策士、策に溺れるの感あり。
わさび葉のおでんも花わさびと思い込んだこちらの早トチリ。
まっ、ここは店名通りにもつ焼き(焼きとん)が全てでしょう。

初対面の相方と入店したのは駅前の大衆酒場「春駒」。
地元の客たち、殊に家族連れで賑わっていた。
椅子席でよかったが入れ込みの座敷に通される。
同部屋には十名近くの大人と未就学の子どもがほぼ同数。
こりゃ先が思いやられるな、いや、マイッたぜ。

気を取り直し、サッポロの赤星で初めましての乾杯。
訊けば、とあるホテルチェーンの統括料理長をなさっている由。
専門はフレンチということで会話に弾みがついた。
得意料理はパテのパイ包み焼きだとおっしゃる。

お通しとして供されたのはブリの煮付け。
これがバカデカくて一品料理並みだ。
何だか出鼻をくじかれ、ほかのつまみに食指が動かない。
一応、タコ刺しと蟹サラダを通し、もっぱら飲みに徹した。
ビールの次は山形の一献をぬる燗で―。

そうこうするうち、ガキンチョたちがドッタンバッタンし始めた。
ガマンはしたものの、あまりにヒドいので
この温厚なJ.C.が親たちに一献、もとい、一言。
あらら、アッという間にみんな帰っちゃったヨ。
こちらもじゅうぶんに飲んだのでお勘定。

歩くには少々遠い町屋まで歩き、2軒目は「A屋」。
ちょいと小ジャレた日本酒バーは雰囲気もいいが
地元の常連に迷惑がかかりそうで紹介できない。
これをキッカケにK野サンとは
定期的な酌交を約し、当夜はお開きとした。

「もつ焼き 三朝」
 東京都荒川区東日暮里6-28-17
 03-3806-7787

「春駒」
 東京都荒川区東日暮里3-40-12
 03-3806-5093