2018年5月7日月曜日

第1865話 忘れられた昭和の町 (その1)

東京都民に忘れ去られた町、
荒川区・尾久(おぐ=Ogu)。
JR東北本線の尾久(おく=Oku)駅は
宇都宮線、高崎線も乗り入れている。
上野駅から一つ目の尾久の次駅ははるか遠い赤羽。
並走する京浜東北線と比べると、極端に駅数が少ない。
京浜東北線は上野―赤羽間に7つもの駅がある。

温泉が湧いたことから大正期には都心の近場の行楽地として
それなりの賑わいを見せたそうだが
近年ではその存在すら知らぬ都民も多かろう。
なぜだろう? なぜかしら?
察するに、ナ~ンもないからだろうヨ。

尾久と聞くと、J.C.の第一感は阿部定事件。
待合「満佐喜」で発生した猟奇的殺人事件だ。
二・二六事件、上野動物園クロヒョウ脱走事件とともに
昭和11年三大事件の一つに数えられている。
ちなみに大島渚がメガホンをとった映画「愛のコリーダ」は
この事件を克明に描いたものだ。

阿部定事件についてはあえてここで語らぬが
忘却の町、尾久を十数年ぶりに訪れた。
上野駅から宇都宮線に乗って尾久駅に降り立つ。
前述したようにホームに流れるアナウンスは
”おく=Oku” であった。

駅名を決める際、責任者が”おぐ”を訛りと勘違いし、
勝手に”おく”と思い込んだためらしい。
そんなことってあるのかネ?
まっ、いいや。

ホームに立って南側を眺めると線路また線路。
ほぼ隣接する田端駅との間に
JR田端・尾久操車場があるからだ。
山手線が乗り入れる田端と異なり、尾久の乗降客は少ない。
1日1万人に満たず、これは都区内にあるJR駅では
越中島、上中里に次ぐ少なさだという。

駅の北側を明治通りが走っている。
このあたりは北区・昭和町。
どうりで昭和の匂いが残っているわけだ。
道行く人の数もまばらであった。

本日の目当ては昭和町の「よしみ食堂」。
そして都営荒川線・梶原駅近くにある「力食堂」。
定食を食べたいわけではないが
食堂のハシゴ飲みを遂行するためにやって来た。

明治通りの裏筋にある「よしみ食堂」はすぐに見つかった。
見つかったけれど、店先に1枚の貼り紙があるじゃないか。
ややっ、何てこったい!
この日、夜の営業はお休みだとサ。
店主が病院に行くんだとサ。
思わず天を仰いだ。

=つづく=