2018年5月31日木曜日

第1883話 デミ・グラスが魅了する! (その2)

東急目黒線・西小山駅のエスカレーターを上がると、
懐かしい町並みが広がっていた。
商店街を流すヒマもあらばこそ、「杉山亭」に一直線である。
あらっ? エントランスの脇に1卓出張って
中年のカップルがオムライスを食べてるヨ。
昼下がりのよき光景、ちょいとしたテラスの昼食だネ。

ドアの把手を引くと店内は大盛況。
4人掛けのテーブルが4卓、すべて埋まっている。
近所の若夫婦か家族連ればかりだ。
さいわい奥のカウンターは先客1人のみ。
4席が空いていた。

古いけど立派なメニューを手に取り、考えに考える。
決断の前にスーパードライの中瓶を通し、
オードヴル代わりにシーフードサラダのハーフサイズを―。
そうしておいてオムライスに比べ、
けして軽くはないハンバーグをお願いした。
もちろんライス抜きである。

サラダはレタスの上に小海老・タコ・イカが並んでいた。
イカはスミイカの赤ちゃんだろうか、
ゲソまで付いた小さいのが2尾だ。
ドレッシングは一般的なフレンチとは異なるが美味しい。
赤みがさしているのはトマトピューレのせいだろうか?
んなことあるわけないな、にんじんだネ。

2本目のビールを我慢しているところへハンバーグが登場。
まるで洋々たるデミ・グラスの海を泳ぐ海亀の如くだ。
セットされたナイフは使わず、フォークだけでいただく。
いいネ、旨いネ、素敵だネ。

ハンバーグを食べるのは実に久しぶり。
と思ったけれど、2週前に王子の「キッチン ハマダ」で
豚肉100%のハンバーグを食べてたわ。
でもあれはランチセットの片割れだからいわゆるデュエット。
正式にハンバーグをソロで注文するのは久々なのである。

ガルニはマッシュドポテトにゆでたブロッコリー。
たっぷりのソースに、ポテトはフライよりマッシュがよく合う。
ポテトの力を借りて一滴残らずソースを拭いとった。
当店のデミ・グラスは子どもにも大人にもジジババにも
歓ばれる均整のとれた万人受けのするもの。
フランス人やアメリカ人も美味しいと感じるに違いない。

「ごちそうさま、大変美味しくいただきました」―
上條恒彦をコンパクトにした感じのシェフに声を掛けると、
「ありがとうございます、またお待ちしています」―
まことに丁寧なご返答。
会計後、マダムに見送られ、すがすがしく店をあとにする。

おう、おう、外は太陽がいっぱいじゃないか。
さて、大岡山まで歩くとしますかの。

「杉山亭」
 東京都品川区小山6-1-3
 03-3712-6222