2018年5月9日水曜日

第1867話 忘れられた昭和の町 (その3)

都営荒川線・梶原駅そばの「力食堂」に入った。
煙たなびく店内を進み、奥のテーブルに着く。
カウンターがあるにはあるが客用ではない。
おびただしい数の眞露(ジンロ)のボトルが所狭しだもん。

スタッフはママらしき(女将という感じじゃない)人と
近所の奥さんのパートみたいな方の2名。
スーパードライの中ジョッキをお願いして
壁に貼り出されたおすゝめ料理の短冊群を見上げる。
誰が書いたか存ぜぬが、いや、達筆である。
殊に”とんかつ”の四文字は見事というほかはない。
失礼ながら店の雰囲気にまったくそぐわない。

にんにく揚げ、チョリソ炒め、羽根つき餃子、鯵フライ。
そんなこんなが並んでいた。
中からミックスフライ(480円)を注文。
種類に富めば、すべてハズレのリスクを回避できるからネ。

生ビールと一緒に運ばれた突き出しは
刻んだオクラに花かつおを散らせたもの。
割り箸で不作法を承知の寄せ箸に及んだら
スススーゥっと手前に寄って来た。
ハハ、小鉢は軽いプラスチックでありました。

あらためて店内を見回す。
いやあ、「ますや」もそうだったが
ここも相当な年代物である。
こういうところが東東京の大きな魅力で
新興の西東京では出逢えるハズもない。

届いたミックスフライはドデカであった。
皿を埋め尽くしていたのは
鰺フライ1枚、メンチカツ1枚、かきフライ2個。
なあんだ、大したことないじゃん! ってか?
冗談じゃないよぉ、サイズがスゴいんだよぉ!

かきフライは他店とほぼ同じだからノー・プロブレム。
問題はメンチである。
女性の化粧台に配備されてる手鏡みたいなヤツ。
こんなん完食できるかな?
そして大問題は鰺だった。
設計用の三角定規もかくやと思われたほど。
こんなん完食できるワケがない。

2杯目の中ジョッキに援護されながら奮闘の結果、
皿には鰺が半枚食べ残った。
もう、あきまへん。
〆張月の冷たいのを1杯なんて算段も吹っ飛んだ。

なあんて綴りながら、尾久の「よしみ食堂」のこともあるし、
近々このエリアを再訪するのはほぼ確実。
忘れられた昭和の町を、J.C.はけっして忘れるものか―。

=おしまい=

「力食堂」
 東京都北区上中里3-18-6
 電話ナシ