2018年5月8日火曜日

第1866話 忘れられた昭和の町 (その2)

尾久駅前の北区・昭和町。
「よしみ食堂」の臨時休業にガックリ。
しからばと明治通りを北西に向かって歩く。
昭和町は2丁目から3丁目と、その地番を換えてゆく。
 
15分は歩いたかな。
2軒目として狙いを定めた「力食堂」に着いたのは17時前。
まだ暖簾は出ていない。
隣りの床屋の店先で赤・青・白のサインポールが
クルクルと回っていた。
 
踏切を渡ってこれもまた、
昭和の匂いに満ちた商店街を行き来して時間をやり過ごす。
しばらくしてから戻っても店は閉じたまま。
とっくに17時を過ぎてるのになァ。
営業時間は厳守してほしいものよのぉ。
 
バカ面下げてひたすら待つのは性に合わない。
通りの反対側、上中里のさびれた商店街を散策する。
理容室、ヘアサロンと名は変われど、
やたらに床屋の多い一廓である。
ホンの5分少々で4本のサインポールに出くわした。
どうなってんのヨ、この町は!
 
ほどなく古びた町の中華屋に遭遇した。
袖看板に「中華そば ますや」とある。
中華そばはともかくもビールが飲みたい。
思い切って入店する。

初老に差し掛かったオジさんによれば、
サッポロとキリンがあってどちらも大瓶。
黒ラベルを選択し、中華そばとともに注文する。
そのときオジさん、テーブルを拭いてくれたのだが
台拭きを見てびっくり仰天。
クシャクシャのタオルが煮しめられたように黒ずんでいる。
(勘弁してくれよぉ!)
心の中で叫ぶ自分がいた。

中細ちぢれの多加水麺にスープはあっさり醤油味。
具はもも肉チャーシュー、細切りメンマ、鳴門巻き。
懐かしさはあってもズバ抜けて美味しいというのでもない。
あとで知ったことながら、創業六十有余年の大老舗だった。

18時近くになって「力食堂」に舞い戻ると、
今度は立て看板に灯りが点っていた。
やれやれ。
先客は2人連れ1組で、かなり出来上がっている。
彼らの卓の灰皿はすでに吸い殻でいっぱい。
ヘビースモーカーズなんだねェ。
まっ、こういう場所では当たり前の光景でありましょう。

=つづく=

「中華そば ますや」
 東京都北区上中里2-38-10
 03-3911-8719