2018年8月1日水曜日

第1927話 インドまぐろの三種盛り (その3)

数年前には「一力」だった「かのや」の1階カウンター。
そのときとまったく同じ席に着いた。
アレは何というのかな? 器械に疎いから判らんが
ウォーキートーキーのヘッドフォン仕様みたいなので
2階とレンラクを取り合う接客係のオネエさんは
上・下を差配しているから店長かもしれない。

その彼女にビール大瓶とインドまぐろ三種盛りをお願い。
銘柄はスーパードライで前回の生ビールと同様だ。
生は”男気ジョッキ”と名付けられ、
他店の大ほどではないが中より容量があった。

「稲荷屋」でビールを封印したうえに
猛暑日の炎天下を歩いて来たため、
大瓶はアッという間にノドを通ってストマックに吸い込まれる。
ヘヘッ、まだまだ飲みまっせ。
「オネエさん、もう1本ネ」
「ハア~イ!」
おう、おう、元気があってよろしい。

立派な三種盛りが運ばれた。
内容は、赤身3・中とろ2・大とろ2切れ。
それぞれに彩り美しく、計7切れはボリュームもじゅうぶん。
一人で食べるには多すぎるくらいだ。
これが1280円也と質・量からして、お食べ得である。

鮨屋のおきまりに使われる一人前の飯台より、
一回り小さい木桶に砕いた氷を敷き詰め、
三チョボに持った桂むきのつま大根と大葉。
その上にまぐろが鎮座ましましている。
まぜわさびが残念ながら
この大型店にこの価格では本わさびを望むべくもない。

それではいただきます、とばかりに赤身から―。
ふむ、フム、へべれけS子にアア~ンしてもらったヤツと
いささかの変わりもない。
肌理こまかく滋味に富んでいる。

インドまぐろには本まぐろ特有の酸味が少なく、
人によってはこちらを好むそうだが何となく判る気がする。
両者の食味の違いは
ヘモグロビンの含有量がもたらすのだろうか。

中とろ・大とろともに文句のつけようがなかった。
インドまぐろとくれば、
第一感は駿州・清水港の「末廣鮨」。
十数年前に訪れたことがあるものの、ピンとこなかった。
むしろ「かのや」に軍配を挙げたいほどだ。
焼き鳥やクリームコロッケが人気とも聞くが
試してないから何とも言えない。

大瓶2本と三種盛りのみで支払いは2460円。
満足度は高いけれど、
テーブル席で声高にしゃべくりまくる馬鹿者ども、
もとい、若者どもの哄笑が
孤独なオッサンを悩ませたのでした。
馬鹿め! 今度は”もとい”ナシ。

=おしまい=

「居酒屋 かのや 上野店」
 東京都台東区上野6-9-14
 03-5812-7710