2019年4月1日月曜日

第2100話 旧友 マニラより来たる (その2)

ハナシを田原町の午前三時に戻そう。
さすがにわれら二人もバテてきた。
当方は翌日、ノースケジュールだったが
相方は知人の結婚披露宴が控えているという。

「半チャン、そろそろお開きにしようや」
「そうですネ、そうしましょう」
「じゃ、最後にクール・ファイブ歌ってくれる?」
「いいッスヨ」
「マイ・ベスト3の『東京砂漠』、『そして、神戸』、
 『噂の女』を3曲メドレーでお願い!」
「ハイ、ハイ」

とまあ、こんな具合で切り上げた。
翌日、いや、0時を回ってたから当日の夜だった。
彼から1通のメールが着信。

驚くなかれ、披露宴に出席したら
隣りに前川清が座ってたんだと―。
そいでもって余興で
「東京砂漠」と「そして、神戸」を歌ったんだと―。
さすがに披露宴で「噂の女」は歌えんけど、
いや、ビックリしたな、もう!

「さっきまで前川サンの曲、浅草で歌ってたんですヨ」
その旨伝えたら、清サンもビックラこいてたんだとサ。
そりゃ、そうだろうヨ。
しっかし、こんなことってあるんだねェ。

何でも互いの持ち馬の調教師が花嫁の父だったんだと―。
たぶん、二人が同席したテーブルは
馬主だらけだったんじゃないかな。

さて此度、待合せたのはJR日暮里駅・北口改札。
夕焼けだんだんへ続く御殿坂を上ってすぐ左折。
界隈で唯一のラブホテルを行き過ぎ、
地元民の住人すらめったに通わぬ裏路地をすり抜けて
やって来たのは昭和の匂い立ちこめる、
初音小路のアーケードだ。

全長20mくらいだろうか、その両サイドに
支那そば屋、煎餅屋、イタリア料理店、
小料理屋、コリアン・スナック、ワインバーなどが
ビッシリと軒を連ねており、
一番奥に各店共用の公衆トイレがある。

入店したのはカウンター10席ほどの「鳥真(とりまさ)」。
その名が示すように焼き鳥の佳店だ。
およそ2年ぶりの再訪で
相方にとっては初音小路そのものが初めてだった。

=つづく=