2019年4月18日木曜日

第2113話 富山湾の恵み (その1)

よく晴れた日の午後。
東銀座で所用を済ませ、浅草へ移動する。
相方と落ち合うのはエンコのランドマーク、
「神谷バー」の2階だが少々遅れ気味だった。

地下鉄を降りて
ロートルにはちょいとハードな階段を上っているとき、
パンツの左ポケットがブルブルきたのでチェック。
「2階満席につき、1階にて待つ」とのことだ。

浅草に来れば、よく利用する「神谷」ながら
1階の、いわゆるバーにはまず行かない。
常に2階のレストランに落ち着く。
レストランと言っても、しゃちほこばった高級感はなく、
ビヤホールめいたダイニング・スペースで
試したことはないが料理を取らずに
ドリンクだけでも許容されるものと思われる。

当店の上下ワン・フロアの差は激しい。
月とすっぽんとまではいかないものの、
月とUFOくらいの違いがあろう。
東京の盛り場に例えれば、
喧騒の1階は新橋、端正な2階は有楽町といった感じだ。
ウーマンを誘うなら1階でもよかろうが
レディーの場合は2階のほかに選択肢はない。

案の定、当夜の1階フロアは騒音の渦。
紫煙まで漂っている始末。
相方は酩酊状態のオジさんたちに囲まれて
談笑に興じていた。

いや、マイッたな。
こりゃ、長居は無用だろう。
1階は食券制だが2杯目からはウエイターに頼めば、
レジに出向いてくれるので、客は席を立たずに済む。
しかし、かなりの混雑ぶりにつき、彼らを捕まえられない。

レジの列に並び、生ビールの中ジョッキと
電氣ブランのオールドを1枚づつ購入した。
フツーの電氣ブランは1杯250円。
オールドは4割増しの350円。
さすがにこの価格差は大きく、味わいが格段に違ってくる。
J.C.はいつもキレ味鋭く、
突き抜け感に優れたオールドをいただいている。

酔っ払いの相手をするのはツラいので
飲むものを飲んだら相方を残し、一足先に店を抜け出した。
エンコの夜風が肌に心地よい。
雷門に向かい、手前を右折してかんのん通りに入った。

=つづく=

「神谷バー」
 東京都台東区浅草1-1-1
 03-3841-5400