2019年4月8日月曜日

第2105話 誘われてエスカルゴ (その1)

先日、乗り込んだ電車が特急だったため、
通過してしまった荒川区・町屋を再トライ。
この日は別段、狙いを定めたのではなく、
数軒の候補店を頭の隅に納めて訪れた。

町屋は、東京メトロ千代田線、京成本線、
都電荒川線(東京さくらトラム)と、
乗り入れる路線が3本もあるのに
これといった名所旧跡や娯楽施設があるでもなく、
つかみどころのない、漠然とした町である。

ちなみに都内における駅前の放置自転車数では昨年、
4年連続トップの北区・赤羽に次いで
ワースト2位へ急上昇した。
こういうのを大躍進とは言わんだろうがネ。

そんな町屋だが早朝から深夜まで飲む場所には事欠かなぬ、
左党にはありがたくも便利な町である。
したがって、下戸にはまったく無縁の土地柄だ。
過去に訪れた人もせいぜい町屋斎場の通夜や告別式に
参列したくらいではなかろうか。

ぶらぶらと歩き始めて
尾竹橋通りが荒川線と交差する踏切前のビルに
ハンバーグ専門店の看板を見とめた。
ビル地下ではほかにも数軒の店が営業しており、
下りエスカレーターに誘われるように降りてみた。

ハンバーグにはあまり興味がないものの、
店頭のメニューに目が釘付けとなる。
当店は洋食屋ながら、主力はハンバーグ。
店名も「ハンバーグ まつもと」だ。
ここに洋食屋には珍しいおつまみセットというのがあった。

昼めしどきならともかく、
夕刻以降はを酒をたっぷりいただくが
つまみはチョコッとあればいい派の身に
このおつまみセットを救いの神と言わずして何と言おう。
頭の中にいくつかあった今宵の候補店は
ワン・クリックで、すべて消去されたのである。

唐揚げだの、海老フライだの、
月並みな揚げものが並ぶなか、
食指を動かされたのはエスカルゴだった。
そう、エスカルゴに誘われたのだ。

ふ~む、エスカルゴねェ。
最後に食したのはいつだったかなァ・・・。
思いをめぐらせていると、
突如、またもや頭の中を
軽快な曲が流れてきやしたぜ。

=つづく=