2019年4月24日水曜日

第2117話 背肝もとめて神楽坂 (その2)

江戸期には栄えに栄えながら
衰退に衰退を重ねた末、消滅してしまった花街・柳橋。
こちらは同じ道を歩みつつも、
しっかりと生き残っている神楽坂。
「かね子」という名のスタンディング・バーに入ってみた。

先客はゼロ。
バーテンダレスの女性によれば、
日本産ワインのみを扱うワインバーとのこと。
う~ん、日本のワインねェ。
ベツに偏見はないんだけれど、
今までにこれぞという国産ワインには1本も出逢っていない。

持論ながら、この国のテロワールに
ワイン用ブドウの栽培は向かないと思う。
キノコ類もまたしかりで
国産の椎茸・舞茸・占地(しめじ)・なめこ等よりも
欧州のジロール・モリーユ・セップ・ポルチーニたちを好む。
とは言いながら、焼いた松茸に酢橘(すだち)を搾って
ぬくめた清酒と一緒に、なんてのはたまらんけどネ。
まっ、松茸とトリュフはそうそう口に入るもんじゃないから
洋の東西における両横綱、別格にしときましょうや。

国産ワインの知識に乏しいため、
女性に説明をもとめると、洋モノ・赤の好みを問われた。
「ピノ・ノワールかネッビオーロ。
 カベルネ・ソーヴィニョンからは限りなく離れたタイプ」
と応える。

「かね子」は女1名、男2名のスリー・オペ。
客の要望に3人が協議を始めるじゃないか―。
出された結論は、まぜこぜワインと来たもんだ。
ん? まぜこぜワイン? 何だヨ、ソレ?

当方に有無を言わせず、グラスに注がれたソレ。
”盛り”はあんまりよくないな。
もっと注げヨ! とも言えず、静かに香りを嗅いだ。
アタリは柔らかい。

舌に少しくトンガリを感じるのは未成熟の証し。
ただ、思ったよりも飲み口に嫌味がない。
ボジョレでもないし、ローヌでもない。
どちらかというと、
北イタリア・ヴェネト州のヴァルポリチェッラに近い。

択べる突き出しは
いずれも小さなキッシュ、キャロット・ラペ、
ペンネのトマトソース。
客に現物を見せながら選択させる。
ペンネがひからびているのはサンプルだから仕方あるまい。
キッシュを指定した。

=つづく=