2019年9月10日火曜日

第2216話 アメリカ橋のたもと (その2)

恵比寿ガーデンプレース内の「ビヤステーション 恵比寿」。
熱々のラプスカウスが運ばれてきた。
トップを飾る目玉焼きはサニーサイドアップ。
食べ始めは玉子にふれず、
コンビーフ&ポテトだけを口元に運ぶ。

ちょいとばかり塩味が薄いが卓上に塩・胡椒の備えなし
ホール内に赴いて接客係に声を掛けるのも億劫だし、
これはこれで、じゅうぶんにビールの友となる。
よしとしましょう。

途中から黄身を崩し、混ぜ合わせてさらに旨し。
家庭でも手軽に作れるシンプルきわまりない料理ながら
晩酌の合いの手のみならず、
ブレックファーストにもピッタリだろう。

それにしてもこの日はハヤシライス、ラプスカウスと
普段はほとんど口にしないものばかり食べている。
早めの帰宅を予定しており、晩酌のつづきは家でする。
つまみを調達するため、
ビヤステの向かいにある三越の地下に降りた。

ここで遭遇したのが世にも珍しき岩魚(イワナ)の刺身である。
立派なサクに目を瞠ったが
そもそも岩魚ってこんなにデカかったかい?
疑念を抱きつつも購入し、帰宅後、調べてみたら
信州大王イワナと命名され、全雌三倍体だという。
要するに、全てメスで体の大きさは通常の3倍ということ。
50cmほどに成長し、
豊洲市場ではキロ2000円の高値で取引されるそうだ。

信州サーモンは何度か食べたが大王イワナは初めて。
3日間に渡り、刺身・昆布〆・バター焼きで楽しんだ。
素晴らしいとは言えないまでも、なかなかの味だった。
ちなみに全雌三倍体イワナは信州に先駆けて
宮城県内陸部で生産され、あちらは伊達いわなと呼ばれている。

ハナシを恵比寿に戻そう。
JR恵比寿駅への帰り道。
動く歩道のスカイウォークに差し掛かると、
視線が先ほど渡ったアメリカ橋をとらえた。
振り返れば、今まで何度も渡橋はしたが
全容を下から眺めたことはない。

よい機会だから東詰たもとの坂道を降りてみた。
見上げるとはたして
アメリカから購入した鉄橋は明るい空色に塗られていた。
フランス煙草、ゴロワーズのパッケージさながらだ。
突然、頭の中に山川豊の歌声が流れ始めた。

♪   風が足もとを 通りすぎてゆく
  久しぶりだねと 照れてわらいあって―
  アメリカ橋のたもと ふと通うぬくもり
  やるせない恋 埋めた街 角部屋の灯り
  石だたみ石だたみ 想い出続く
  いつかいつか 熱かった青春  ♪
      (作詞:山口洋子)

「アメリカ橋」は1998年2月のリリース。
今は亡き平尾正晃の作曲でありました。

「ビヤステーション 恵比寿」
 東京都渋谷区恵比寿4-20-4
 03-3442-9731