2019年9月12日木曜日

第2218話 両国橋のたもと (その2)

両国橋のたもと、「桔梗家」にて
鯉のあらいを突つきながら冷たいビールを飲んでいる。
酢味噌とわさびを択べるが鯉には酢味噌が合う。

それはそうと、
好きでもない鯉を何で食うんだ! ってか?
しかも相方が嫌がってるのに何で注文したんだ! ってか?
いえ、戯れ歌に”はずせない鯉”なんて綴っちゃったから
仕方なく通した次第なんざんす。
早いハナシが自分で自分を縛っちまったんでさァ。

どぜう屋に来て絶対はずせないのは丸鍋と抜き鍋だ。
両者まことに甲乙つけがたく、
どちらが甲でどちらが乙かは人ぞれぞれ。
好きずきとしか言いようがない。

J.C.の場合、店の技量・力量に大きく左右されるものの、
基本的に丸鍋を好む。
気をつけたいのは下手な居酒屋。
店主の道楽や手慰みで出される丸は下煮不十分で
箸にも棒にもかからないのが少なくないから
専門店以外では抜きが無難だろう。

続いてはうなぎの肝焼き。
これはわれわれ共通の好物につき、あれば頼むの必注品。
粉山椒を振って口元に運ぶ。
う~ん・・・イマイチだなァ。
うなぎを専門に扱う優良店のそれには遠く及ばない。

いよいよ真打ちの登場である。
鉄鍋に丸と抜き、一人前づつ合盛りにされている。
お運びさんがどぜうの上に大量の長ねぎを投じ、点火した。
これが当店の流儀で、
他店ではおおむね客がねぎの投入を任せらる。

新潟は長岡の銘酒、和楽互尊の冷たいのに切り替え、
丸のほうから箸をつけた。
う~ん・・・もちろん水準はクリアしている。
しているけれど、どうにも舌のヤツが
「ひら井」、「飯田屋」と比較していやがる。
やはり届きませんでしたネ。

一方の抜きはさほど劣らず、名店との差が縮まった。
途中で生の鶏卵を所望し、残り半分は溶き玉子にくぐらせた。
すき焼きの要領で、どぜうを食する際はいつもこうするが
このスタイルは万人にオススメ。
玉子でとじる柳川鍋よりずっと美味しいですヨ。

腹の具合もちょうどよく、
腰を上げての勘定は1人4千円に満たない。
昨今は稀少価値もあって
庶民の口には入りにくくなったどぜうだが
うなぎの後追いだけは勘弁していただきたいものざんす。

「桔梗家」
 東京都墨田区1-13-15
 03-3631-1091