2019年12月2日月曜日

第2275話 モウカの星 (その2)

モウカの星を刺身で堪能したものの、
やはり生で食べるとハカがいかない。
その夜はほかにも戦利品少なからず、
星の残りは翌日に回すことにした。
小皿に移し、日本酒を振りかけ、ラップして冷蔵庫へ。
扉を閉めるとき、ひと声掛けてやる。
アスタ・マニアーナ!

二日目は火を通した。
あれこれと思いをめぐらせたが
シンプルにガーリックと一緒にバターでソテーする。
コケコッコーの星(鶏ハツ)でよくやる調理法ながら
これはもったいなかったかもしれない。
貴重な食材を月並みに処理してしまった。
もちろんじゅうぶん美味しかったがネ。

ことほどさように御徒町駅前にある、
サカナのデパート「吉池」には重宝している。
最近の当たりは星ガレイ刺身とシマアジ昆布〆で
白身魚のデリカシーを存分に楽しんだ。
ともに高級魚の代表格なのに
買い求めやすい価格がありがたい。

当店では珍魚・珍品との出会いが珍しくない。
手に入れば、面倒臭がらず厨房に立つ。
ヨロイアジ(鎧鰺)を初めて見たときは驚いた。
背びれ・腹びれの一部がビヨヨ~ンと糸状に伸び、
宇宙人ならぬ宇宙魚を思わせる容姿。
塩焼きにしてみたらトンデモない美味だった。
真アジとエボダイを足して割った感じは両者の上をゆく。

縞舌平目もよかった。
奇妙ないで立ちはヒル(蛭)の親玉みたいだから
女性には毛嫌いされること必至。
だけど、生き血を吸う吸盤があるでもなし、
よくよく見れば、自然の造形の美に感動すら覚える。
これは定番のムニエルに仕立てデリシャス。

稀少な石垣貝(蝦夷石影貝)が実に旨い。
たまに鮨屋で見かけるものの、
サカナ屋の店頭ではめったにお目にかかれない。
アオヤギ(舌切り)より肉厚な舌を刺身でやる。
甘酢にくぐらせると、さらによい

蟹肉に似た味わいのフジツボは珍味。
塩茹でよりも塩蒸しが望ましく、
食酢に生醤油を垂らしてよし。
洋風にマヨネーズかカクテルソースもまたよし。

一昨日は今が旬の福井産・背子蟹(ズワイのメス)と
岡山産・蝦蛄を晩酌の友にしたが
よくぞ日本に生まれけり。
多種多彩な海の幸に、ついつい酒量も増加の一途だ
J.C.にとって精肉売り場はちと退屈ながら
鮮魚売り場はわが世のシャングリラなのであります。

「吉池」
 東京都台東区上野3-27-12
 03-3831-0141