2019年12月10日火曜日

第2281話 落着の麻婆豆腐 (その1)

先日、合羽橋道具街の帰りに立ち寄ったものの、
定休日に命中してしまい、
行きそびれた台東区・松が谷の「大精軒」。
もっともそのおかげで
長期休業目前の「松月庵」に間に合ったんだけどネ。
まあ、そのお礼をこめて・・・というワケでもないんだが
仕切り直しで出向いてみた。

何度も訪れている当店ながら当ブログではまだ未紹介。
取り立ててすぐれた料理があるでもなし。
ただ、気づいたら何となく足を向けている・・・てな感じだ。
初訪の際は迷った末にワンタンメン(650円)を択んだ。
5個入ったワンタンは今風にリッチなものではなく、
昔ながらの餡が小さいタイプだった。

チャーシューは厚い肩ロースの煮豚が2枚。
焼き豚にこだわる向きは不満だろうがじゅうぶんに旨い。
4本のシナチクは史上最カタ。
割る前の割り箸を煮〆て四分断したがごとくで
歯ざわりもさることながら味付けがまことにけっこう。
これだけもらってビールを飲みたいくらいである。

珍しくも2枚入りのナルトはこれまた厚切り。
海苔まで2枚、どんぶりを飾り、
ラーメン用だからスープに溶けることがない。
とにかくケチケチしないのが「大精軒」のいいところ。

細打ちちぢれの多加水麺が硬めにゆでられノビにくい。
スープは典型的な昭和風味。
しょっぱめで化調を感じるが
あとでそれほどノドは渇かず。

 13時半を回って店主が食べ始めたまかないはもやしそば。
切盛りするのは初老の夫婦に倅かな?
倅が調理、女将が補助、ただ今食事中の店主は配膳だ。
浅草からちょいと離れた、この界隈は町中華の宝庫。
利用するのは地元の人たちばかりで、出前もこなす。
昼飲みの常連と女将が交わす会話が耳に入ってくる。
話題は年金、生活保護からドヤ街・山谷に及び、
蒸発だのトンヅラだのヤバい単語が飛び交う。

後日、浅草で仲間と麻雀に興じたあと、そのまま押しかけた。
八宝菜、回鍋肉、かつ煮、チャーハンなどを注文し、
ビール、酎ハイ、紹興酒、おのおの好き勝手に飲んだ。
メンバーのKチャンが手を挙げ、
麻婆豆腐の追加を主張するも同意者ナシ。

「豆腐なんざ、カミさんに作ってもらいなヨ。
 丸美屋とか永谷園とか、いっぱいあるじゃん」-
なんて言い出す輩も出る始末。
あきらめきれないKチャン、食い下がって言い放ったネ。
「麻雀のあとは麻婆だろっ!」
一同納得して一件落着となりました。

=つづく=