2019年12月13日金曜日

第2284話 落胆のチャーハン (その2)

衝撃のチャーハンから2ヶ月経った頃。
いつものように「大弘軒」でまた同じモノ。
備え付けの「ゴルゴ13」を読みながら待つ。
ふと、厨房に目をやると、
あれ~っ、オジさんが別の人物に代わっているヨ。
気のせいかと思い直して
つくづく観察してみたものの、どう見ても別人だ。
年恰好と丸い背中がよく似ているが
以前の人の髪は黒かったが、今の人は白髪が勝っている。

ふ~ん、こんなことってあるんだねェ。
もっとも大事なのはチャーハンのデキだ。
二匙、三匙、慎重に味わって、ちっとも変わっちゃいない。
ホッと胸をなでおろしたのでした。

その翌週、空腹に耐えかねたて、よせばいいのに
若いリーマンに人気のサービスセットにチャレンジ。
ラーメン(500円)+チャーハン(600円)が
サービス価格の1000円で食べられる。
ラーメンは塩ラーメン、あるいはワンタンに変更可能だ。

麺よりは胃にやさしかろうとワンタンで通す。
ところが天津麺+半ライスより難渋した。
数えるとワンタンは13個。
「ゴルゴ13」を打っちゃってワンタン13を撃破したものの、
当方の受けた打撃も大きい。

そのまた翌週、
わが人生において注文した記憶のない麻婆麺をトライ。
ありゃりゃ、白髪のオジさんの姿なく、
二番手が中華鍋を振ってるじゃん。
中1、外1の2人体制になっていた。
いったい、どうなってんのヨ、この店は—。

何よりもビックラこいたのは
黒のサインペンにより、品書きが棒線だらけ。
数々の料理が消されまくっていたのだ。
そりゃ、今のアホ政権下、
官僚たちが恥ずかしげもなく取り出す、
のり弁文書よりはマシだけど、呆気に取られた。

よくよく見たら店の内外、あちこちに覚え書きあり。
今のところ麺類のほかは
中華丼、麻婆丼、肉丼と、3種のどんぶりのみの提供。
最愛のチャーハンが消滅したのだ。
国破れて山河あり、障子破れてサンがあり。
落胆のチャーハンを引きずりながら
麻婆麺なんか食ってる場合じゃないぜ。
(いや、食ったんだけど・・・)

確かめちゃいないが料理人が見つかれば、
お家再興のチャンスもまたある様子。
その日をひたすら待つほかに手立てはない。
調理と接客のご両人による切盛りと成ったからには
この二人が夫婦だったみたい。
ん? 待てヨ、人の出入りがこうも激しいのは
三角関係のもつれかもしれないゾ。

「大弘軒」
 東京都台東区根岸1-7-11
 03-3875-6493