2019年12月24日火曜日

第2291話 或る日突然 (その3)

28年前の羽田空港。
せっかく届いたパスポートだったが
搭乗予定のJAL便には間に合わなかった。
それでもシンガポール航空の夜便に
エクストラチャージなしで乗ることができた。
利用者にとってありがたい航空会社間の連携は
今も続いているのだろうか?

話題は互いの近況、そして昔ばなし。
ニューヨーク時代は共通の友人が多かったから
彼女は今こうしてる、彼はどうやらこうやら
話の種がつきることはない。

「牛タン いろ葉」にほど近い「磯平」へ河岸替え。
竹鶴のハイボールで二度目の乾杯だ。
つまみは本わさび添えとあった、
まぐろ刺しを眉ツバながら通すと、案の定、似非わさび。
もともと信じちゃいないから腹も立たない。

ハイボールのお替わりとともにとんぺい焼きを追加。
小麦粉を使わずに豚肉と玉子で仕上げる、
一種のお好み焼き風オムレツは
腹にたまらないぶん、酒の友にはピッタリ。
通常は薄切りの豚バラだが
「磯平」は厚切りのロースを使用。
とんぺい焼きとポークピカタの中間、てな感じだ。

満席に近づいて店内が騒がしくなってきた。
どこか静かな場所を探すため、
東小路&平和小路をブラブラと行ったり来たり。
大井町きっての盛り場も日曜ともなればうら寂しい。

呼び込みにツラれてスナックだかラウンジだか、
よく判らぬ「R」なる店に入り、
先客ゼロで無人のカウンターへ。
角瓶のロックはちとキツいから炭酸をもらった。

女の子は二人ともフロム・コンティネント。
あとから来たママも同様だ。
面白くも何ともどころか
ハッキリ言ってロクでもない店なれど、
放ったらかしにしてくれるのが、むしろありがたい。

四半世紀を超えて相みる二人。
空白を取り戻しに行こうとは思わぬが、
若い頃とはまた違ったつき合い方もあろう。
少なくともこれから長きに渡って酌交を重ねる、
強力な手駒が1枚増えたことは確かだ。

この日は奇しくも12月8日。
戦争よりも平和を愛するJ.C.、
ここで西施の顰(ひそ)みならぬ、
万智の短歌に倣い、締めくくりに一首。

ときを超え別れた女と逢ったから12月8日は再会記念日

=おしまい=

「磯平」
 東京都品川区南大井5-2-7
 03-6433-2527