2020年1月10日金曜日

第2304話 天ぷらチェーンのとんんかつ屋

十数年に渡り理髪を任せているK子チャン。
彼女は若い頃の一時期、
天丼チェーン「てんや」でバイトしていた。

「賄いは毎日、天丼だったのかい?」
「もちろん、そうですヨ」
「そりゃ、シンドいな。シツッこかったろ?」
「エッ、どうして? 美味しくって楽しみでした」
「ん?・・・」

20年ほど前、「てんや」がチェーン展開を始めた頃。
錦糸町の駅ビルにあった店舗で天丼にトライした。
いや、あまりにヒドくて言葉を失った。
重たい油と貧弱な素材に、もうコリゴリ。

その10年後、神保町店での晩酌セットは
生ビール1杯と天ぷら数点。
改善のあとは見えても
水準のクリアには達していなかった。

それが最近、気まぐれに立ち寄った御徒町店で
20年ぶりの天丼を食し、いささか驚いた。
コロモはサックサク、揚げ油の重さも感じさせない。
天種は海老・キス・イカ・いんげん・かぼちゃ。
味噌汁が付き、540円ときたもんだ。

町場の鮨屋が持ち帰りと回転寿司に駆逐されたごとく、
町天ぷらの未来もキビしい。
もっとも一部の高級店を除くと、すでに淘汰が進んだ。

折も折、浅草在住の酌友から一報あり。
「てんや」がとんかつ屋を手掛け、繁盛しているという。
ところは雷門通り&すし屋通りの角。
前話でふれた仁丹塔がかつてあった場所の目の前である。

さっそく出向いた平日の午前11時。
「とんかつ おりべ」は8割の入りだった。
後客は2階に案内されてゆくが階上の様子は判らない。
食券機でロースかつ定食(790円)を購入。
店名も価格帯も上野の「とんかつ山家 」に似ている。

8分ほどで定食が整った。
ロースかつはチルドポーク麦うらら三元豚を謳うが
国産ではなく、カナダ産らしい。
肉質硬めにして筋切りが不十分、
豚肉本来の香り、旨味にも欠ける。
キャベツは少なめ、大根漬けはおざなり。
わかめ味噌汁は牛めし「松屋」にクリソツ。

総じて「てんや」グループはとんかつより天丼。
その証拠に2軒隣りの「てんや」のほうが
ずっと繁盛している。
「おりべ」の客単価が高い ことを
差し引いても勝敗は明らかでありました。

「とんかつ おりべ」
 東京都台東区浅草1-9-1
 03-5830-0251