2020年1月14日火曜日

第2306話 大陸から 半島から (その1)

前日は寅さん映画を観るため、
自宅と上野の間を電車で往復したに過ぎない。
そりゃシーフードのミックスフライをつまみに
ビールを飲んだりはしたけどサ。
本格的な歩き初(ぞ)め、外飲み初めに
立ち上がったのは正月三が日の最終日であった。

千駄木の須藤公園を一めぐりして
谷中銀座から、日暮里の谷間、
根岸の里から、鬼子母神の入谷を経たあと、
終点の三ノ輪まで、あっちフラフラ、
こっちヨロヨロしたために1時間半も歩いちまった。

アーケード商店街、ジョイフル三ノ輪に到着。
ありゃあ、エリア随一の繁華な商店街が
シャッター・ストリートと化してるじゃないか。
ジョイフルよ、お前もかっ!
J.C.の悲痛な叫びが人気のない通りにこだまする。
というのは冗談。
各商店が稼働し始めるのは翌4日なのでした。

稲荷町在住のJRに勤める友人から
ジョイフルに2軒の餃子専門店があり、
酒類はおろかソフトの用意すらないが
飲みものを勝手に持ち込み、
店頭のテーブルで食せると聞いた。

この2軒の存在を認知していながら
イートインどころかテイクアウトもしていない。
ダメ元で開いてりゃラッキー、そんなつもりで来たから
両者、扉を閉ざしていても精神的ダメージは皆無。

時刻は15時過ぎ、空腹を感じた。
朝は何を食べたっけ?
ベーコンエッグに菜花のソテー、
ライ麦入りマフィンのバタートースト、
ライムジュースの炭酸割り、ホットミルクティ―。
7時間近く経過しちゃ腹も減るだろうヨ。
かといって営業しているところはほとんどないし、
開けてる店も午後の休憩中だ。

都営荒川線・三ノ輪橋駅と日光街道にはさまれた、
狭い路地に居酒屋を見つけた。
昼から飲めて唄える、地元密着型だ。
なるほど歌謡曲が店外に漏れ出している。
ん? 吉幾三の「酒よ」だネ、これは―。
ほかが全滅とあっては入らんとうい選択肢はないやろ。
でもねェ・・・。

引き戸を細目に引いてみた。
閉めようとしたときに女性スタッフと目が合った。
こうなると立ち去りにくい。
気に染まらなきゃ、早めに退却すれば済むこと。
誘われるがまま、カウンターの左端にすべり込んだのでした。

=つづく=