2020年1月13日月曜日

第2305話 寅さん見るのは つらいよ

寅さんシリーズ第50作、
「男はつらいよ お帰り 寅さん」を観てきた。
柴又に映画館はないから
上野の PARCO-ya 7FのTOHOシネマズにて―。

個々の映画について語りすぎると、
ネタバレにつながるため、気を使うが
ミステリーじゃあるまいし、ベツにいいよネ?
いや、この映画を楽しみにしていて
まだ観てないファンも多いハズ、やっぱりよくないな。
よって、慎重に書き進めます。

寅さんはもとより、おいちゃん・おばちゃん、
御前様にタコ社長、すべて泉下の人となり、
映画が成り立つのかいな? 懸念する向きは少なくない。
でも、映画には回想シーンという名の伝家の宝刀がある。
こいつは必殺だ。

男はつらいよシリーズでは基本的に初期の作品が好き。
これはビートルズの楽曲、裕次郎の映画にも通ずる傾向。
殊に寅さん映画に関しては
初代おいちゃんを演じた森川信の存在があまりにも大きい。
「とらや(現くるまや)」の茶の間に
この人の姿さえあれば、寅さん抜きでも笑えてしまう。
稀代の名脇役でありました。

シリーズ終盤における主役は
寅さんというより、満男と泉の若い二人。
欠かさず観たが、同時に体力尽き果てる寸前の、
俳優・渥美清を見ることとなり、
車寅次郎に扮する以前からファンだった身には
つらく、キツいものがあった。

今回もハナシの中心は若いカップル転じた中年カップル。
ゴクミはそのまま美しく年を重ねた感じ。
今年50歳になる吉岡秀隆がいい俳優になった。
ほとんど映画館に行かないから
彼の活躍ぶりを掴みきれていないものの、
時折り見せる悲喜こもごもの表情、
哀切極めた眼(まなこ)の光りに非凡さがうかがえた。

「お帰り 寅さん」についてはほどほどにしておこう。
巻末のオマケは例によって
シリーズのマイ・ベストファイヴを―。

① 第7作   男はつらいよ 奮闘篇 (榊原るみ)
② 第27作 浪花の恋の寅次郎 (松坂慶子)
③ 第29作 寅次郎 あじさいの恋 (いしだあゆみ)
④ 第5作  男はつらいよ 望郷篇 (長山藍子)
⑤ 第6作  男はつらいよ 純情篇 (若尾文子)
         ( )内はマドンナ役

「お帰り 寅さん」はそのまんま、
お別れ 寅さん」でありました。
金輪際、新作が生まれることはない。