2020年2月5日水曜日

第2322話 魔が射して新宿三丁目 (その1)

下高井戸から京王線に乗ったが
この電車は都営新宿線直通、本八幡行きだった。
長いこと、新宿で飲まないのは嫌いな街だから―。
昨秋、下北沢から新宿に来たときも
喧騒を避けるため、南口に出て新宿通りを真っ直ぐに
御苑前を経て四谷荒木町に脱出したのだった。

たまには三丁目で飲むとしようか―。
こんな気持ちになるのは魔が射したのだろう。
例え、魔が射したとしても二丁目ではなく三丁目。
ちゃんと歯止めが掛かっている。
オネエに興味はないからネ。

一駅先の新宿三丁目で降りればいいものを
メガターミナル・新宿駅で下車したのが大間違い。
西口から東口に抜けるのに一苦労した。
やっとこさ東口に出たものの、
あまりの街の変貌ぶりに息を飲む始末。
オマケに人、人、人の波、こんな場所で
オウムがサリンをブチ撒いたら大惨事必至だ。

たまにはおでんで燗酒を飲みたくて
「上燗屋 富久」に向かうが
確か当店の生ビールはプレモルじゃなかったかな?
どこぞで軽く1杯、引っ掛けてから行きたい

お誂え向きの1軒をすぐ近くに発見。
「82 ALE HOUSE」ハッピーアワーが19時までで
キリンラガーのハーフパイントが350円。
店内にシガーの香りが立ち込めている。
見回すと、カウンターの隅に二人連れの外国人。
オッサンのほうが葉巻をくゆらしていた。
久しぶりに嗅ぐネ、この匂い。

それにしてもハーフパイントってこんなに小さかったかな?
一息で飲み干し、即お替わり。
キリンラガーの瓶は苦みがキツいが生ならわりとスッキリ。
15分の滞空で「富久」に移動した。

開店直後につき、先客は1カップルのみ。
逆L字形カウンターの一番奥に通された。
カウンターの内外を一望できる特等席である。
切盛りするのは中年女性が二人で店主の姿は見えない。
訊ねたら、療養のため目下入院中とのことだった。

黒糖焼酎の喜界島をロックでお願い。
キリッと締まって旨いネ、こいつは―。
突き出しに小茄子の揚げびたしが供される。
おっと、こちらもいいじゃないか―。
目の前の横顔二つ、あらためて見較べた。

=つづく= 

「82 ALE HOUSE 」
 東京都新宿区新宿3-10-8
 03-5367-4882