2020年2月3日月曜日

第2320話 母と娘のカレーハウス

世田谷区を京王線沿いに歩きたくなった。
ただ、何となく・・・。
八幡山で各駅停車に乗り換え、降り立ったのは芦花公園。
そう、明治の文豪・徳冨蘆花ゆかりの土地柄である。

腹ごしらえのため、駅周辺を物色
のちほど駅南側の世田谷文学館と芦花公園に廻るから
北口商店街をぶらりぶらり。
と、言いたいところなれど、
軒の連なりはあまりにも短く、すぐにジ・エンド。

候補店は2軒に絞られた。
町中華然たる「栄来軒」と「カレーハウス ちとせ」。
店舗の半数がシャッターを閉ざす、うらぶれたアーケードで
レトロ勝負となれば、どっこいどっこい

「栄来軒」は東上野に同名店があり、よく利用している。
しかし、立て看板のプラスチックがあちこち割れて
つぎはぎだらけのカレー屋を後押ししたくなった。
全身絆創膏まみれの相撲取りみたいなんだもの。

カウンターの左端に着座。
隣りのオジさんがもくもくと食べてるのは
カレーでなくコロッケ定食。
ここは揚げもの中心の定食屋も兼ねている。
ただし、そのコロッケが旨そうに見えず、
同じ揚げもので気になっていた、
かきフライカレーの見送りを決める。

「ちとせ」のビールは常飲する銘柄だった。
ポークカレー(650円)をライス少なめでお願いしたら
中瓶と一緒に福神漬&らっきょうが供された。
らっきょうをポリポリやりながら飲む麦酒よ。
冬の時間がゆるやかに過ぎてゆく。

オープンキッチンで調理を担当するのは娘。
中と外を行ったり来たり、接客に励むのが母親。
愛想のよい母はていねいな客あしらい。
一方の娘は無口で不愛想。
思わず首を傾げてしまうがDNA鑑定などせずとも
面立ちが似ているから母娘に違いない。

ゴロゴロとまではいかないまでも
豚バラ肉多めのカレーは辛くはないが甘くもない。
けしておざなりではない深みを感じた。

行儀悪く膝の上に置いた「ビッグコミック」を読みながら
豆腐・油揚げ・白菜に椎茸もちょっぴり入った、
味噌汁を飲んでいると、雑誌がすべり落ちそうになる。
あわてて両ひざで挟み、落下を防ごうとしたその瞬間、
反動で揺れたお椀からかなりの量の汁があふれ、
ジーンズの股間を襲う。

やっちまったぜ、まるでおもらししたみたいじゃないか。
天罰てきめんの不作法だけど、人に言わせりゃ、
自己責任(この言葉は最も嫌いな日本語)なのだろう。
とにかく乾くまで席を立てないぜ。
しばし、いたずらに時を費やす芦花公園の昼下がり。

「カレーハウス ちとせ」
 東京都世田谷区南烏山3-1-11
 03-3308-0224