2020年2月27日木曜日

第2338話 ビールとワインとティジェッラと (その1)

「新京」をあとにして
同じ西武池袋線沿線の椎名町にやって来た。
野口五郎の「私鉄沿線」を
いつの間にか口ずさみながらネ。

山手通りの陸橋をくぐったところで行く先を思案する。
線路の北側の地番は西池袋、南側は目白である。
要するに池袋へ行くか、目白に向かうかの二者択一。
都内屈指の歓楽街、池袋なら止まり木探しに苦労はない。
しかし、学生街の目白にはこれといったアテがない。
さすらいのドリンカーにとって無縁の土地なのだ。

道なりに歩いていたら目白駅前に到達した。
十数年も腕時計を持たない身にはガラケーだけが頼り。
相棒は17時を表示していた。
駅前交番の脇に階段を発見。
あれ~、こんなところに石段なんかあったかな?
誘われるように降りてみると、
踊り場にバールと喫茶店がオサレに並んでいる。
好奇心につまづいて、どちらかに決めることにした。
時間も時間だし、ここはおチャよりおチャケであろうヨ。

店の名は「ティジェッレリア ガタリ」。
「いらっしゃいませ~!」―
明るく元気な声に迎えられる。
5~6人も立てばいっぱいの立ち飲みバールだ。
1時間以上も歩いたからノドはカラカラ。
イタリア産ビール、モレッティを立て続けに2本空けた。

先客は1組の若夫婦のみ。
気さくなカップルで言葉を交わすうち、
奥さんが大学の後輩と判明し、会話に弾みがついた。
バーテンダレスも客あしらいが上手な娘さん、
と思いきや、あとで判ったが実は娘に非ず。
四十路半ばを超えたと聞いて
われわれ3人ビックリ仰天の巻。

ミディアムボディの赤ワイン、
モンテプルチアーノ・ダブルッツォを通すと、
モルタデッラの切り落としをサービスしてくれる。
ちなみに店名にあるティジェッレリアは
ティジェッラ屋さんを意味する。
エミリア=ロマーニャ州・モデナの名物で
マカロンを一回り大きくした円形パンは
クラウンとヒールに花柄の焼き模様を持つ。

ハンバーガーのバンさながらに
生ハムやペスト・モデネーゼを挟んで食する。
ペスト・モデネーゼはラルド(豚の背脂)に
ニンニクやハーブを混ぜ込んだペースト。
焼き立てのティジェッラならラルドが溶けて
より美味しくなるが残念なことに焼き置きだった。

=つづく=