2020年2月24日月曜日

第2335話 以前は通った焼肉店

この時季、散歩のときの楽しみは
突然、漂い来る沈丁花の香りである。
世に数々の匂いあれど、これにまさるものはナシ。
今年の書き初めならぬ嗅ぎ初めは先週の金曜日。
ところは仏壇の町、台東区・稲荷町の路地裏だった。
開いた花弁に思わず鼻を寄せ、
仔犬のようにクンクン嗅いでしまった。

それはそれとして
かつて文京区・白山に時代がかった和食店があった。
豆腐懐石「五右ヱ門」は湯豆腐を名物としたが
釜茹での刑に処せられた石川五右衛門を連想してしまい、
多少のシラケを伴いながら箸を上げ下げした記憶がある。
その隣りに「Lee Cook」という焼肉店があり、
焼肉を好まぬJ.C.が珍しくもひいきにしていた。
今は両店の跡地にマンションが建っている。

4年ほど前に閉店した「Lee Cook」が
半年の空白期間を置いて隣り町の向丘に移転し、
再開業したことは知っていた。
ところがその間、自身の焼肉離れに拍車がかかり、
訪問の機会を失ったのだった。

肉好きの友人を誘っておジャマする。
肉好きというより、”好”の字を分離分解させて
肉女子だネ、この人は・・・オバはんなんやけどぉ。
開店直後の17時過ぎに入店。
ビールのグラスを合わせ、ガンガン注文してゆく。
おっとぉ、白山時代の末期には消えていた、
フルーツトマトのキムチが復活してるじゃないか。
無条件でそいつと白菜キムチ、さらにナムル盛合せを。

トマトがやはり美味い。
白菜はそれなりだが、こんなに赤くないアッサリ系が好み。
ぜんまい・ブロッコリー・ヤングコーンに
キャロット・ロペ風のにんじんが加わるナムルがオサレ。
お味もけっこうである。

を生マッコリに切り替えたあとは肉、肉、肉。
ハラミ・レバー・ロース・カルビを次々に。
匂い・煙りとは無縁の無煙ロースターは優れモノながら
比較的低温で肉を焼き上げるため、
食べ頃の見計らいに慣れるまで少々とまどった。
4種の中ではロースがベストであったかな。

締めに取り掛かろう。
冷麺じゃないし、ビビンパでもない。
ましてやクッパであるハズがない。
協議の結果、じゃが芋のチヂミに落ち着いた。
以前はなかったメニューだ。

運ばれた代物はとてもチヂミには見えない。
表面をトロけたチーズが覆い隠している。
いかにも女性が歓びそうな一皿はオッサンに不向き。
2切れほどつまみ、残りは相方の奮闘に期待した。
すると奮闘など無用とばかり、
ペロリ平らげたオバはんは、ケロリ涼しい顔をして
ニッカリ笑いましたとサ。

「Lee Cook」
 東京都文京区向丘1-12-6
 03-6801-5433