2020年2月18日火曜日

第2331話 3年ぶりのキトキト酒場 (その2)

「立呑み 龍馬」では中ジョッキを1杯づつ飲んだだけ。
それもあわてふためいたものだから
ビールを飲んだ気がまったくしない。
一方の「根岸家」のビールはキリン一色。
一番搾りの中瓶を選択した。

見なれた店内をあらためて見回し、ふと思う。
当店の設いは大塚の名店「江戸一」によく似ている。
コの字形カウンターは一回り小ぶりだが
そのぶん「江戸一」にはないテーブル席を備え、
左手の通路半ばにトイレがあり、
奥の大部屋との位置関係もまったく同じ。
うがった見方をすれば、「根岸家」は
「江戸一」のレイアウトを模倣したのではないか?
だからって、どうということはないがネ。

多彩な刺身の品揃えは広く浅い仕入れによるため、
話に夢中になって油断していると、
正面上方に並ぶ品札はたちまち裏にされ、
これが売切れの合図。
こんなところも大塚の名店にクリソツなのだ。

ほうぼう刺し、いわし刺し、ずわい蟹酢。
ファースト・ラウンドの注文は以上。
何はともあれ、生モノから抑えてゆくのが
当店の流儀・・・ではけっしてなくて
利用客の賢い傾向と対策なのである。
いい歳こいて今さら受験生時代の繰り返しとは
実に難儀なこっちゃ!

ほうぼう良し、いわしさらに良し。
ところが蟹はポン酢のぶっかけ過ぎで
素材の持ち味がスポイルされてしまい、残念な結果に―。
いわしの品札が真っ先に裏返された。
危ない、アブナい。

高清水の燗に移行した。
一緒に蛍いかわさを追加。
さば刺身を見つけ、女将に〆さばではなく、
刺身であることを確認したうえで注文。
さばは包丁を握る人間が
よほど鮮度に自信がないと、刺身にされない。

団体客が続々と詰めかけてしばらく。
奥から騒音がもれ聞こえてきた。
トイレのついでにのぞいてみたら
座敷に2組のグループがびっしりと
東アフリカに大発生するバッタの如し。

かたや、若いリーマン&OLの男女混合。
こなた、オッサンばかりのオス・オンリー。
余計なお世話ながら、こんな宴会を催すのに
わざわざ「根岸家」を使わなくてもいいんじゃないの。
まっ、このあたりが東神奈川と大塚の差と言えば差。
ざわめきを背中に聞きながらわれわれ二人、
横浜の浅草、野毛の街へ向かいましたとサ

「根岸家」
 神奈川県横浜市神奈川区東神奈川1-10-1
 045-451-0700