2020年7月23日木曜日

第2443話 思いがけない タルト・フレーズ (その2)

港区・赤坂の人気洋菓子店「しろたえ」。
2階の喫茶室に空席があったようで
すぐに案内されたが、その際に
「お好みのケーキは?」との質疑あり。

ケースの中をのぞきもしていなかったから
一瞬たじろいだものの、
最初に目に飛び込んだタルト・フレーズを指定する。
デッカいケーキは持て余すけど、
タルトなら食後にちょうどいい。

それはそれとして「しろたえ」はケーキを頼まねば、
お茶を飲めないのかな?
そんなことはなかろうが、とにかく頼んじまった。

フロアのテーブルは四人掛け4卓、二人掛け1卓。
空卓は二人掛けのみで、そこに案内される。
ブレンド、エスプレッソ、カフェオレと3種あるコーヒーから
エスプレッソを択んだ。

しばらくしてウエイトレスが
そろ~りそろ~りと歩み寄ってきた。
あらあら、デミタスカップに液体があふれそうだヨ。
いや、実際はすでにソーサーにこぼれていた。
日本酒居酒屋の冷や酒じゃあるまいし、
いっぱい、いっぱい、注がなくてもいいんじゃないの。

不思議なのは砂糖もクリームもないのに
なぜかデミタススプーンが付いてきた。
よくかき混ぜて飲め!ってことかな?
それほどジャマになるものでもないし、まっ、いいか。

一緒に運ばれたタルト・フレーズはとてもコンパクト。
京唄子(古いねェ~)みたいな大口の持ち主なら
一口でパクリといけそうながら
そこは上品なJ.C.、四口に分けました。
しっかし、食べにくいよなァ。

書き忘れたがフレーズは仏語で苺のこと。
日本で最もポピュラーな洋菓子、
苺のショートケーキを当店はガトー・フレーズと呼ぶ。
はす向かいの単身女性がソレをお替わりした。
ふむ、ケーキってビールみたいにお替わりするもんなんだ。
この歳になって初めて知ったヨ。

それにしても喫茶店とスイーツが大嫌いだった男が
今じゃコーヒー飲みつつ、苺のタルトを食らってる。
思いもかけず、人生の裏街道を歩いてる気分。
かつては寄りたい、食べたいと言い張る女たちを
却下し続けてきたのに、変われば変わるものよのぉ。

10分ほどの滞空で「しろたえ」の階段を降りると、外は小雨。
見附の駅へ急ぐ耳朶に今度はブルー・コメッツの歌声が―。

♪   小雨にしずむ 赤坂を
  あなたとふたり 歩いたね
  すねて泣いてた かわいいうそが 
  わかれ話の はじめとは
  赤坂 赤坂 ぼくはかなしい  ♪
      (作詞:橋本淳)

「雨の赤坂」のリリースは1968年のクリスマス当日。
あの頃の赤坂はまだ、クリスマスの似合う街だった。

「しろたえ」
 東京都港区赤坂4-1-4
 03-3586-9039