2020年7月9日木曜日

第2433話 銀座と日比谷を往ったり来たり (その4)

銀座の最北端にある「日東コーナー」に二人。
さして広くもない店内の一番奥、
フロアが一段上がった窓際は特等席と思われた。
手にする白ワイン、
1グラス500円+のリベリタスはCPが高い。

飲食業に手を染めて70年余りの当店。
その間、パブレストラン、カフェ、イタリアン、
果ては焼酎居酒屋と変遷を重ね、
此度の移転を機会に原点に立ち戻りながら
スペイン・バルをも標榜する。
いったい何をしたいのか、よく判らん。
変遷というより迷走に近いネ、これは―。

アペタイザーは
タコのマリネ ポテトサラダ クロスティーニ
このタコがあんまりだった。
質の良くないアタマ(実は胴体)ばかりで食感が悪い。
アンチョヴィが隠し味のポテサラはそれなり。
オレンジ・パイン・ブルーチーズのクロスティーニは
組合わせの妙に加え、シャルドネとの相性もバッチリ。

挽き肉とトマトのボロネーゼ風ピンチョは
これまたクロスティーニ仕立て。
ピンチョ(串・爪楊枝・ピン)でパンに
具材を留めることから名付いたタパスの一種ながら
昨今はピンを省く店が多い。

グラスワインを赤に切り替える。
ニュージーランドのピノ・ノワールは1杯650円+。
こちらもなかなか優良だ。

炭火焼きが運ばれた。
鶏・豚・合鴨・仔羊はすでに串を抜かれて一皿盛り。
何でも塩にこだわったそうで
それぞれケイジャン・カレー・パプリカ・ピートスモークと
4種のソルトを使い分け、”決め塩”と呼んでいる。

だが、実際に味わってみると、さほどの差はなかった。
策士、策に溺れた感あり。
それでも当夜の料理ではこれが一番。
チャコールさえあれば、
素材をシンプルにグリルするのがベストなのだ。

ワインのお替わりをしつつ、相方がつぶやいた。
「さっき話してた、立ち飲み屋だけど・・・」
日比谷の「三ぶん」のことである。
「その店、行ってみたいな」
「ああ、近いうちにお連れするヨ」
「今からどう?」
「ハイ~ッ?」

結局は薬局。
15分後には有楽町のガード下を抜けてゆく、
二人の姿を見ることができました。

=つづく=

「日東コーナー 1948」
 東京都中央区銀座1-27-10
 03-3535-6567