2020年7月13日月曜日

第2435話 あぶらぼうずの衝撃 (その1)

一日中、雨の予報にもかかわらず、
ちっとも降らない日の午後。
行く先を定めぬままに家を出た。
不忍池のほとりをめぐって上野広小路へ。

中央通りと春日通りの十文字、
上野松坂屋の向かいにバス停がある。
ヒマに任せて時刻表をながめてみた。
いやァ、ずいぶんあっちゃこっちゃに出てるんだねェ。

目にとまったのは江戸川区・平井駅前行きだ。
いえ、べつに平井に行きたいわけではないが
そのルートに好奇心を刺激されたのだった。

上野松坂屋→下谷神社→雷門→スカイツリー→
十間橋→中居堀→東墨田→ゆりのき橋→平井駅

興味を抱いたのは赤字区間
都内いたるところに出没するJ.C.が
未だ踏破していないエリアなのだ。
時刻表をチェックしたら、数分後に発車オーライ!
しめた!とばかり、そそくさと乗り込む。

車内はガラガラ。
最後部シートの右端に腰を下ろした。
ここは窓の広い特等席につき、観光バスに乗ってる気分。
行き過ぎる街並みをながめていた。
と言ってもオノボリさんじゃないから
雷門やスカイツリーには目もくれない。
もっぱら飲食店の店先に神経を集中していた。

下谷神社前の町中華、
「紅楽」の紅い暖簾が風に揺らいでいる。
つい先日、助六寿司を買い求めた、
押上「味吟」の店先には短い行列が―。
十間橋の南詰たもと、前世紀末に訪れた、
うなぎ「三松」は今も健在、同慶のいたりなり。

中居堀の交差点を突っ切ると店舗数が激減するが
ここからは未踏地帯、両の瞳をこらす。
バスは中居堀通りでUターンならぬ、
Vターンをやらかして、ゆりのき橋通りを走ってゆく。

橋の手前で右折し、旧中川沿いを進むが
リバーサイドの遊歩道が素敵だ。
近いうち歩きに来よう。
ここは旧中川水辺公園。
川面が岸辺に迫り、流れる水は今にもあふれんばかり。

出発から50分経過、終点・平井駅に到着
何処で飲もうかな?
思いをめぐらす、このひとときこそ、
一日のうち、一番シアワセな時間です。

=つづく=