2024年9月23日月曜日

第2629話 銀幕の 百恵・友和・連太郎

極上ののラザニアに満足して
神保町シアターに移動した。
百恵&友和の「霧の旗」(1977)は
東宝&ホリプロの製作で監督が西河克己。
松本清張の原作は百恵にとって
初めてのミステリー映画だ。

松竹版(1965)のリメイクだが
前作は山田洋次監督、倍賞千恵子主演。
今回の東宝版では獄死する百恵の兄が
関口宏(露口茂)。
彼女の依頼を断って失脚する弁護士は
三國連太郎(滝沢修)。
その愛人が小山明子(新珠美千代)。
( )内は松竹版だが2本とも
凄い役者の揃い踏みである。

彼女を助けようとしながらも
受け入れられない雑誌記者に
三浦友和が扮するが
松竹版の新聞記者、近藤洋介より
大きくクローズアップされている。
これは百恵&友和の共演映画だからネ。

百恵の主演映画は「伊豆の踊子」以来だが
明るい踊子には見られなかった、
彼女の暗い魅力が引き出されている。
さすがに三國との濃厚なラブシーンに
違和感を覚えたものの、
こういうストーリーの作品なので致し方なし。
目をつぶろう。

ただ、気になって仕方なかった点が一つ。
最初から最後まで偶然が続き過ぎるのだ。
それも単なる偶然ではなく、
奇遇ばかりが次から次へ連続する。

清張の出世作にして社会派推理小説の嚆矢、
「点と線」では ”偶然” に疑問を呈し、
”作為” を見抜いて犯人を追い詰める筋とは
まったく別人の作品ではないかー。

ラストシーンはヒロインが
富士の樹海に足を踏み入れ、死を予感させる。
同じ清張原作の松竹映画「波の塔」と
まったく一緒で有馬稲子の姿がまぶたに重なる。
存在感の重さは圧倒的に稲子のものだがネ。

「山口百恵映画祭」はすでに終わり、
「映画で楽しむ私たちの偏愛文学」などと
まわりくどいタイトルの特集が催されている。

「青春の殺人者」(中上健次)
「銀河鉄道の夜」(宮沢賢治)
「黒蜥蜴」(江戸川乱歩)
「人間失格」(太宰治)
「獄門島」(横溝正史)
など、全12本が上映される予定。

J.C.が出掛けてゆくのは
「桜の森の満開の下」(坂口安吾)と
たまたま前述した「点と線」(松本清張)の
2本だけであります。
映画の前はイタリア料理屋「カドヤ」です。