2024年9月27日金曜日

第3633話 下谷は狭くなりました (その1)

この日は Zooとも・白鶴との逢瀬。
いつものように錦糸町の
おなじみ喫茶「ニット」で落ち合った。
彼女の定例診察日にあたり、
医院が混んでずいぶん遅れて来た。

ドライを飲みながら待つため、苦ではない。
隣りの卓でやはりドライを飲むオジさんに
何やら旨そうなプレートが運ばれる。

顔なじみのお婆ちゃん(オーナー)に
「あのお皿はカレーライス?
 それともビーフシチュー?」
「ビーフシチューですヨ、美味しいですヨ」
「今日はいいけど、それじゃ今度ネ」
「ハイ、ハイ、そうなさい」

遅れて到着した白鶴としばし歓談。
その後、互いにバスで移動だが
彼女は駅南口から東陽町行き。
こちらは駅北口から日暮里行き。
北と南の泣き別れであった。

バスは押上・浅草・竜泉を過ぎて下谷。
読者の方々は台東区・下谷をご存じかな?
かつては上野に匹敵するほど
広範囲にまたがった街である。
現在の上野広小路も
下谷広小路と呼ばれていた。

今は昔、下谷に属する地域は現在の
上野・上野公園・上野桜木・北上野・
東上野に加え、秋葉原・池之端・入谷・
下谷・台東・根岸・三ノ輪・谷中・
竜泉・千束・日本堤・松が谷、
その全てが収まっていた。
いかに広大であったか、
ご理解いただけよう。

東上野の下谷神社にその名を残すほか、
”恐れ入谷の鬼子母神” と並ぶ地口、
”びっくり下谷の広徳寺” が世に知られる。
その広徳寺はとっくに練馬に引っ込み、
跡地に台東区役所がふんぞり返っている。

どうしたことか現在は
下谷1~3丁目のみに縮小。
猫のひたいもいいところだ。
往時の栄光なんざ見る影もない。
ヒドいもんだねェ、泣けてくらァ。
行政はいったいどういうつもりなんだ!

おっと、バスに乗ってたんだ。
竜泉から昭和通りを渡り、下谷3丁目。
其処で降りました。
目当ては海鮮居酒屋「おおつか」です。

=つづく=