2024年9月3日火曜日

第3615話 田端新町 日はまた昇る

この日は早く家を出た。
午前中にそこそこ散歩を済ませたい。
これくらいは朝めし前である。
もとい、昼めし前だった。

日暮里・舎人ライナーと
都営荒川線を乗り継ぎ、荒川区・小台に到着。
狙いは初めて歩く旧小台通りだ。
またの名を小台銀座という。

バスが走る小台大通り(あっぷるロード)に
メインストリートの座を奪われ、
西側を並行して走る旧小台通りはさびれた。
店々のシャッターは8割方下りている。
飲食店は数軒しか開いていない。

およそ1キロの道のりを突っ切り、
田端新町3丁目の明治通り交差点。
向こう側に古びた日本そば屋が見えた。
店先に進むと、屋号は「日の出屋」。

当店もさびれ感漂うが趣きある佇まい。
昔は繁盛したものと思われる。
ちょいと早いが昼めしにしようかー。
相席用の大テーブルに着いて
一番搾りを飲りながら品書きの吟味。

ん? 花小町?
洒落たネーミングながら
たぬきそば・ごはん・コロッケだとサ。
その名に似合わぬダサいトリオだな。
合わせ天丼・合わせかつ丼・
合わせ開花丼なんてのもあった。
合わせは丼とそばのセットのことで
それぞれに減量されている。

開花丼かァ・・・頼んだことないなァ。
よお~し、いてまえ!
文明開化後、明治天皇の食肉奨励のおかげで
生まれた産物だから開化丼か正しかろうが
近年は牛肉にとどまらず、
豚肉にも適用されるようになった。

J.C.はあえて牛肉使用を開化丼。
普段は他人丼と呼ばれる豚肉ならば
開花丼と表記することにしている。
開化と開花はキッチリ区別したほうが
スッキリするというものだ。

コシの強いもりそばは期待以上。
つゆが下世話な甘みを感じさせ、
池之端の行きつけにも似て好きなタイプ。
豚肉の開花丼も薄味仕上げで好かった。

客足は途切れることなく、
地域に密着した賑わいを見せている。
コロナ下では苦労したようだが
田端新町に日はまた昇っているのだ。
レシートに "昔の香り 今の味"
一筆ありました。

「日の出屋」
 東京都北区田端新町3-13-7
 03-3893-8734