2011年9月8日木曜日

第136話 小さいことはいいことだ

 ♪  大きいことは いいことだ それ!
  おいしいことは いいことだ それ!
  森永エールチョコレート
  大きく食べて おいしく食べて
  50円とは いいことだ    ♪


昭和のテレビCM史に大きな足跡を残す、
森永エールチョコレートのコマーシャルソングである。
世にこんな作曲家がいたのかね?
と、万人に思い知らしめた山本直純サンでした。

ところがどっこい、エールチョコはあまり売れなかったようで
ロッテのガーナ、グリコのアーモンド、不二家のルック、
そして王者、明治のミルクチョコレートの後塵を
図らずも拝していたように思う。
それが証拠にすぐ消えちゃったものなァ。

このCMがお茶の間の注目を集めた、その翌年あたり、
直純センセイは昭和の名曲、
「男はつらいよ」の主題歌を世に送り出した。
このメロディーと江戸川の風景はセットになって
日本人のまぶたに焼き付き、耳にこびりついている。

大きいワリに売れなかったエールチョコ。
となると、大きいことはあまりいいことではないのかもしれない。
わが身の嗜好からもそれはハッキリと言える。
うな重だって一番小さいのを頼むし、あればうな丼でじゅうぶん。
(予算の都合もあったりしますが・・・)
穴子なんかもメソッ子と呼ばれる幼子(おさなご)が好きだ。
とんかつ屋でもプレミアム・ヴァージョンのロースカツや
ヒレカツは極力避け、ランチのサービス品を注文することが多い。
町の中華屋の餃子と焼売も小さめが好きだし、
ラーメンだって太麺よりも細麺をチョイスする。
牡蠣も小粒、たら子も小ぶりなものにこそ、舌が美味をより感じる。

定期的に出没する御徒町のフィッシュマーケット、
「吉池」で理想的なちびっ子たちに遭遇した。
まずはご覧くだされ。

類いまれな小サイズの目板がれい

隣りの100円玉と見比べてほしい。
これがワンコインで4尾も買え、余は満悦であった。
甘辛く煮付けたら、そのテクスチャーのなめらかなこと、
あえて例えるなら赤ん坊の尻っぺたの如し。
As smooth as baby's ass  ですな。
われながら上手いことを言うと自画自賛。

もう1つはこちらである。

何だかお判りか?

正解は墨いかの赤ちゃん、俗に言う新いかである。
この時期、まことに貴重なもので
江戸前の鮨屋ではことのほか珍重される。
これもまた繊細な舌ざわりが命だ。
刺身にするのは皮むきが大変ながら
半分は刺身、残り半分はサッと煮て食した。
旨かったか? ってか?
あったり前じゃん。

けっつろ~ん!
気球に乗って天国に行っちゃった、
直純センセイにゃ申し訳ないが
実に、小さいことはいいことだ。

「吉池」
東京都台東区上野3-27-12
03-3831-0141