2011年9月26日月曜日

第148話 乙女はママになっていた (その2)

16年ぶりに再会したN実と
アサヒビールの直営店「23 BANCHI CAFE」で
冷たいビールを飲んでいる。
当社自慢のエクストラコールドである。
この夏は例年にも増してコヤツのお世話になった。

彼女からメールが届き、メシでも食おうとなったとき、
幼い子どもがいると聞いて、こりゃ子連れの昼めしかと思いきや、
ワインが飲みたいから晩めしがいいと言う。
託児所に預けて来るのだそうだ。
そういう事情には疎いため、虚を衝かれた感あれど、
近頃の母親の育児はそんなものかネ。

今やママとなった乙女のリクエストはイタリア料理であった。
いいでしょう、いいでしょう、
さすれば、浅草随一の「カリッスィマ」にご案内しましょう。
この店のシェフは浜町の「アル・ポンテ」の出身。
J.C.も一時期、ごく短期間ではあったが
「アル・ポンテ」のHシェフにイタリア料理を習ったことがあり、
兄弟弟子と言えないこともない。

ビールは飲んで来たのでいきなり赤ワイン。
しばしリストとにらめっこして選んだ1本は
ネッビオーロ・ダルバ ブルーノ・ジアコーザ'07年。
ニューヨーク時代にさんざっぱら飲んだ造り手である。
ネッビオーロはピノ・ノワールを抑えて一番好きなセパージュだ。

スターターは生ハムとルッコラのピアディーナ。
ピアディーナは中東のピタに似ているが酵母は使わない。
具をはさんで食べる、言わばピッツァのサンドイッチ版だ。
青山にはその名も「ピアディーナ」なる専門店があるそうな。

続いてサルデ・アル・ベッカフィコ、鰯のベッカフィコ風だ。
このシチリア料理は”超”の付く大好物。
説明が長くなるので、興味のある方はググッてみてください。
ピエトロ・ジェルミ監督の映画「誘惑されて棄てられて」で
父親が娘の婿に「今晩ベッカフィコをご馳走するぞ!」と叫ぶ、
あのシーンが懐かしい。

主菜は仔うさぎのローストにした。
じゃが芋が付け合わさってくるが
フェノッキオ(ういきょう)を追加する。
カルチョーフィ(アーティチョーク)や
プンタレッレと並んで、もっともイタリア的な野菜がコレ。

締めはフェデリーニ・プッタネスカ(娼婦風)。
パスタは最後に食べるのが好きで
日本そば屋のせいろ、中国料理店の炒麺の感覚ですな。
そうしたほうが腹の収まりがよい。

そろそろ託児所の子どもが心配になる時間だが
母親はどこ吹く風でチャッカリ旦那を迎えに行かせたという。
やれやれ、ヒギンズ教授を気取って淑女に育てたつもりでも
躾(しつけ)がイマイチ出来ていなかった。

結局は薬局、あろうことか3軒目へ流れる。
数分後には行きつけの「志ぶや」のカウンターに
酔眼の二人が居座りましたとサ。
やれやれ・・・。

「カリッスィマ」
 東京都台東区浅草1-18-4
 03-5826-0678