2011年9月12日月曜日

第138話 地獄でタコハイ (その1)

非喫煙者になって何年経つだろうか。
喫煙者だった頃もたびたび短期禁煙は敢行した。
ニューヨークに赴任していた時代、
毎年正月になったら年の初めのためしとて
10日間ほどタバコをやめた。
別段、苦痛を感ずることもなく。

そしてこの調子ならいつでもやめられるゾとばかり、
自分自身にしっかりコンファームし、
自信に満ち満ちて、また吸い始めるのだ。
「今年も元気だ、タバコが旨い!」―てなもんや三度笠。
どうです、賢いでしょう?
いや、ほとんどバカですネ。

本郷にある「鮨すゞ木」に出掛けた夜のこと。
ちなみにここは界隈随一の鮨店。
文京区一の鮨屋と言い切ってもよい。
当夜の面子はT大准教授のT子女史と
彼女の元教え子にして、わが元部下のT村クンだった。
何だか”T”ばっかりやな。

予定より早く本郷に姿を現したJ.C.は
例によって近所の探索にいそしむ。
夕暮れの町を散策するうち、禁断症状が表れてきた。
そうですがな、アル中の症状ですがな。
とにかくビールが飲みたくて仕方がなくなったのだ。
禁煙はツラくなかったが、禁酒は絶対にムリだろうな。

以前、漫画家の東海林さだおサンにお会いしたとき、
やはり夕方の4時頃になると
ビールが飲みたくなってソワソワし始めると伺った。
その道の大家に同胞を見い出してうれしかった。

ハナシが横道にそれるが、あれは1984年の夏。
友よ、また古い話かヨと言わないでちょうだい。

 ♪ 何も言わないで ちょうだい  
   黙ってただ 読みましょう 
   だってチョッカイは つらい
   ブログの後に してね  ♪


倍賞千恵子の声色がとても好きだった。

エニウェイ、当時はシンガポールに赴任しており、
夏休みに単身、トルコ周遊の旅へ出たのだ。
シンガポール―イスタンブール間で一番安いキャリアは
パキスタン航空だったのでそれにした。
カラチに途中下機できるのも魅力だったし・・・。

カラチには1975年、
ロンドンからの帰りにストップオーバーして
ホンの数時間、市内観光したことがあった。
パキスタン航空が用意してくれたカレーを
空港近くのホテルで食べたっけ。

ハナシは戻り、1984年夏である。
空港からタクシーで市内に入り、
中級ホテルにチェックインしたら、館内のバーへ直行だ。
目当てはむろん冷たいビール。
ところがバーテンダー氏、「ビールはない!」の一点張り。
思いもかけない強烈な肩透かしに
哀れJ.C.、もんどり打って黒房下に転落である。
バーにビールがないとはこれいかに!

=つづく=