2012年6月4日月曜日

第330話 あきれた三人組 (その2)

銀座1丁目の「三州屋」にて
あら煮A&あら煮Bをつまみながらビールを飲んでいる。
突き出しのAはブリかと思いきや、
かなりデリケートな食味からしてカンパチであろう。

木の芽(山椒の葉)が香るBの金目鯛は佳品ながら
甘い味付けと小骨の多いのに困った。
もっとも難点を差し引いても食する価値はある。
それに700円だから銀座では良心的だろう。

金目を半分食べたところで白鶴の燗に切り替えた。
徳利の容量は1合半くらいかな。
はっきりとした値段は判らぬが
会計から引き算したら900円少々と思われた。
これは銀座といえどもちょいと高い。
ごく普通の量産品だし・・・。

独酌でやり始めたちょうどそのとき、
♂2、♀1の三人組が入店して相席となった。
相席といっても大きなテーブルだから
間に椅子一つぶん空いている。
お互いストレスを感じない距離である。
だが、彼らのオーダーを聞いてわが耳を疑った。
注文品のすべてをご披露しよう。

ビール大瓶1本 刺身盛合わせ1人前
生野菜1人前 鳥豆腐3人前

別段、おかしくはないかもしれない。
でもネ、これが最初で最後の注文だった。
やっぱり何かヘンでしょう?
実はこの3人、揃いも揃ってビールが嫌いときた。
というよりも酒が飲めないのであった。
下戸が徒党を組んで大衆酒場に来るかい?
まったくもってあきれた三人組だヨ。

男Aは何とかコップ1杯ほど飲んだ。
男Bは注がれたビールに口もつけない。
女性にいたっては
「ワタシもともとアルコールを分解できない体質で
  まったく飲めないんですよ」
別に聞き耳立ててるワケじゃないが
どうしても耳に入ってきてしまう。

実は彼らの目当ては三州屋名物の鳥豆腐であったのだ。
1人1鉢抱えて脇目もふらずガツガツだもんネ。
おそらく男たちはランチタイムの常連なのだろう。
旨い鳥豆腐を同僚の女性に食べさせようとやって来たらしい。
それが証拠に例のオバちゃんが
1本のビールに突き出しを3つ出した。
さすがにここでお茶というわけにもいかず、
飲めない代償に欲しくもない刺盛りや
生野菜を頼んで店に気を使ったのだろう。

でもネ、余計なお世話かもしれないが
酒場でのガツガツは傍で見ていて
あまりみっとものいいもんじゃないですぜ。
場の雰囲気を壊すからネ。

鼻白んでしまってここらあたりが潮時と思い、
オバちゃんに声を掛けた。
「オネエさん、お勘定!」
振り向いたオバちゃん、何とニッコリ微笑んだじゃないの。
へへッ、オニイさんと呼ばれたらオネエさんと返すのが
渡世の義理ってもんじゃあ、ないでしょうかねェ。

「三州屋 銀座一丁目店」
 東京都中央区銀座1-6-15
 03-3561-7718