2012年6月12日火曜日

第336話 寝転んで「現代」 (その4)

今、風邪をひいている。
およそ5年ぶりのことだ。
いや、5年かどうかは定かでなく、
何しろめったに風邪をひかないタチなので・・・。

一時期よりだいぶよくなったが咳が止まらない。
抗生物質を投与されるとすぐに治るらしいが
そういう特効薬はもっと歳をとって命がアブナいときに使いたい。
それでもあと3~4日経っても症状が回復しなかったら
どこかの医院に行くとしますかの。

最近、テーマを引っ張りすぎだとよく言われる。
寝転んで読んだ2冊の「週刊現代」シリーズも
今日でやめるから勘弁してください。
ん? いつもと違って神妙じゃないか! ってか?
そうですとも、人間というものは
病気になると弱気になるんですよ。

6月16日号の全記事中、いちばん気になったのは
有馬稲子の告白
 「監督と女優が男と女になるとき」
である。

私は人を恨むことが苦手で、嫌なこともわりとすぐ忘れてしまう。
でも、一人だけ、許せない男性がいます。
ある高名な映画監督。
才能にあふれ、高く評価されていました。

この監督は「東京オリンピック」を撮った人。
映画監督と映画女優の間のことだからよくあるハナシで
これ以上、二人の関係を掘り下げるつもりはない。
ただ、有馬稲子は大好きな女優。
彼女について深く語ると、
また2、3回引っ張りそうだから適当に切上げるとしましょう。

彼女が出演した映画のマイ・ベスト3は
①波の塔(中村登)
②東京暮色(小津安二郎)
③ゼロの焦点(野村芳太郎)
もちろん映画の出来映えとしてではなく、
女優・有馬稲子を評して選んだものだ。

「波の塔」の人妻役で
若き恋人の津川雅彦を上野駅に迎えるシーン。
夜行列車から降りて改札を抜けてくる津川に
「お帰りなさい!」―こうひとこと。
あの一瞬の表情は今まで見てきたすべての映画の、
すべての女優のワンショットのうちでもっとも好きだ。

ちなみに稲子は上記3本の映画でことごとく死んでいる。
富士の樹海、東京(五反田?)の病院、金沢では乗用車内。
あたかもガリアのノルマ(ベッリーニ)、
エジプトのアイーダ(ヴェルディ)、
ローマのトスカ(プッチーニ)、
オペラのヒロインのごとくに。

1953年、くだんの監督と稲子が
出会うきっかけとなった映画のタイトルは「愛人」。
ちょいと出来すぎだけど、
運命とはこういうものなんでしょうかねェ。

=おしまい=