2012年6月20日水曜日

第342話 荻窪のぶたとブタ

その週はJR中央線の荻窪に2回も出掛けた。
週刊誌の取材がらみである。
小まめに実地を踏破しなければ佳店は見つからない。
もちろん下調べを怠ることはできないが
やはり当該店の店先に立つことが何よりも大事。
商売柄、いい店に出会うと鼻がヒクヒク鳴り出す。

そうして遭遇した店でも当たり!は少ない。
野球の打者でいえば4打数1安打といったところかな?
しかもせっかく白羽の矢を立てたのに
”取材お断り”のケースがあとを絶たないから
結局は10打数1安打になってしまう。
10軒あたってやっと1軒が日の目を見るわけだ。

最初の日の狙いはかねてより食べてみたかった「ぶたや」。
”伝説の風味焼き”を声高らかに謳っている。
何が伝説なのかというと、
源流はむか~し成城で40年続いた定食屋さん。
常連だった現在のオーナーがその味を忘れられずに
引退した本家の店主を探し当て、
風味焼きを伝授されて開業に踏み切ったという次第。

どれほどのもんやねん? 
それなりの期待を胸に訪れた。
開店直後の正午過ぎに入店すると先客はナシ。
カウンター8席の小さな店で壁際に順番待ちの丸椅子が4脚。
風味焼きはヒレとロースがあり、3枚付けのロース(M)をお願い。
これが730円で別注文のライス(S)が150円。
朝鮮焼肉屋風のわかめスープが付く。

千切りキャベツの上に
一見、豚肉生姜焼き風の風味焼きが乗って現れた。
別段、見ても食べてもどこが”伝説”なのか判然としない。
このレベルなら都心にいくらでもある。
いや、もっと美味しい店がゴロゴロだ。
最近、50円ほど値上がりしたようで割高感が否めないし、
何よりもプラスチックの容器とトレイが社食みたいで安っぽい。
これじゃダメでしょ、「ぶたや」さん!

後日、訪問したのは「とんかつ 力」。
「りき」ではなく「ちから」と読む。
以前、店の前を通りかかったとき、
タレかつ丼なる一品を目にして
これは使えるかも・・・と思った次第だ。

12時半近くだというのにここも先客ゼロ。
(おい、おい、だいじょうぶかヨ?)
場合によってはヨソに回る予定で
一番小さいタレかつ2枚乗せをお願い。
ごはんも半分にしてもらった。
値段は650円、近頃のラーメン価格だネ。

小ぶりのかつは豚ヒレかつである。
出来合いのきゅうりのキューちゃんみたいなのと
豆腐・ほうれん草入りの豚汁が付いたが
食べ始めてすぐにガックシ。

いやあ、荻窪のランチ事情はきびしいなァ。
所詮、この町はラーメンだけの町なのかねェ。
となりの西荻はうまもんだらけだというのに。
立ち上がれ、荻窪住民!

「伝説の風味焼き ぶたや」
 東京都杉並区天沼3-9-2
 03-3392-2450

「とんかつ 力」
 東京都杉並区荻窪5-17-7
 03-3392-8955