2012年6月25日月曜日

第345話 映画漬けの一日 (その3)

その日の朝は裕次郎と雷蔵に引き続き、
久松静児監督の「続・警察日記」をひかりTVで観ていた。
この映画を観るのは二度目になる。
「警察日記」の続編でともに1955年の公開。
映画全盛時代を象徴するように
立て続けに撮られていたんだネ。
裕次郎が出現する前夜の日活映画がここにあった。

舞台は会津磐梯山のふもとにある小さな町。
「警察日記」では森繁久弥という大きな柱があったが
続編にはスター級の配役はナシ。
いろいろと町を揺るがす事件が起きるわりに
全体として粒が小さい印象は否めない。
三國連太郎と芦川いづみがまだ初々しい。

前作ではいたいけな愛らしさで
観客の涙を搾った子役の二木てるみがここでも健在。
才能に恵まれたこの女優は17歳になった10年後、
黒澤明の「赤ひげ」で大きく花開く

観終わったあとはメールの整理とブログの原稿書き。
そして講談社が送ってくれた「FRIDAY」に目を通すと、
早や夕刻である。
この日はのみともT村クンが軽くつき合えとの仰せ。
W杯最終予選のヨルダン戦は必見につき、
1時間だけの約束で千代田線・町屋駅にて待合わせ。

向かったのはこの町の呑ん兵衛の吹き溜まり、
飯より酒の客が多い「ときわ食堂」だ。
ナントカさんという外人のオジさんの常連客がいて
J.C.も何度か見掛けている。
もっともこの日、彼の姿はなかった。

スーパードライの生で乾杯。
ここの生中は他店の生大に近い。
浅草の「神谷バー」同様、ケチケチしないところがよい。
最近は生中を謳っておきながら
実際は生小を出すあざとさ丸出しの愚店が増えたものなァ。

常磐沖の珍魚・どんこの煮付けに始まり、
手羽先塩焼き、ポテトサラダ、厚揚げ焼き、
キス天ぷら、かぶぬか漬けなどを次々に。
飲むほうも瓶ビールに移行し、続いて生レモンハイだ。
だがネ、こんな調子じゃ1時間で切り上がるワケがないわいな。

左手首のスウォッチを見やると、
あら、大変だ!
今さらあわてて帰宅しても
キックオフにゃ間に合わない状況に追い込まれちまった。
サッカー狂のJ.C.が日本代表のW杯予選を見逃すってか?

へへへ、でもダイジョビだったんだもんネ。
別に秘策があったわけでも何でもない。
目の前の、あいや、より正確には目の上のタンコブが
もとい、目の上のテレビジョンが中継を始めたでないの。
かくしてあらためて腰を落ち着けたのでした。
「オネエさん、生レモンハイお替わりねっ!」

=つづく=

「ときわ食堂」
東京都荒川区荒川7-14-9
03-3805-2345