2012年9月5日水曜日

第397話 物忘れの達人 (その2)

しっかし、よく物を忘れるもんだと感心する。
ここまでくりゃあ、もう達人の域に達してる。
のみとものHしクンからのメールには
「おたがい、忘れ物には気をつけましょう。
 そろそろクセなのか、寄る年波なのか
 区別が付きにくくなっていますので―」
とあった。
いや、ごもっとも。

その北千住の夜である。
去年の今頃、16年ぶりに会ったニューヨーク時代の友人、
N美と駅ビルで待ち合わせた。
自宅にわさびを切らしており、ルミネの地階で調達して赴く。

当夜はもともとエリアの未訪店を数軒つぶす予定。
豚のブレンズ(脳味噌)の煮込みをウリにしている、
「ささや」でスタートした。
脳味噌はそう食べられる代物じゃないから
抑えておきたい一品ではある。
実食してみると、煮込みよりもつ焼きに分があり、
牛のハラミ、豚の上ナンコツ&レバーがよかった。
ただし、北千住の物価指数を考慮すれば割高感否めず。

小料理屋風のたたずまいを見せる「葵」へ移動。
千住が江戸四宿に数えられ、繁華を極めていた時代なら
”葵”の屋号は許されなかったに相違ない。
ひしこいわしの酢〆に惹かれ、注文するその瞬間、
目当ての品が突き出しとして登場した。
こういう偶然は大歓迎だが
代わりに二人の意見が一致した新さんま塩焼きは売切れ。
隣りのオッサンが最後の1尾を突ついている。
それもきったねェ食い方で―。
こちとら割り箸でオッサンの頭を突つきたくなった。
ハハハ、そりゃ冗談。

「葵」の自慢は牛すじ煮込み、なるほどこれはすばらしい。
同じ通りにある超有名店、「大はし」のソレを超えている。
切り盛りするのは七十代と思しき女将独りきり。
接客・調理・会計のすべてを取り仕切る。
がばいばあちゃんもビックリのスーパーばあちゃんだぜ。

3軒目は「酒屋の酒場」。
名の知れた店なのに、なぜか今まで未訪だった。
古き良き大衆酒場をイメージして入店したが
意想外なごくフツーの雰囲気に少なからず落胆。
頼んだシャコわさ、穴子白焼きもそれなりだ。
期待を外されて先を急ぐ。

やって来たのは「オステリア・シエロ・アズッロ」。
「青空食堂」と訳そうか。
ワイン好きのN美のためにイタリアンで締めることにした。
所望したのはバーニャ・カウーダともう一品。
確か鴨のラグーのタリアテッレだったかな?

都合4軒でお開きとするも、帰宅したら大切なわさびがないヨ。
2軒目に持ち込んだところまで覚えちゃいるが、あとはおぼろ。
しょっちゅうこれだもんネ、、つくづく自分がイヤになる。
今後は唐草模様の風呂敷を持ち歩き、
首に結わえつけとくかな・・・、かつての東京ぼん太みたいにヨ。

「ささや」
 東京都足立区千住2-65
 03-6661-3773

「葵」
 東京都足立区千住2-29
 03-3882-7700

「酒屋の酒場」
 東京都足立区千住中居町27-17
   03-3882-2970

「オステリア・シエロ・アズッロ」
 東京都足立区千住2-65
 03-3870-0432