2012年9月14日金曜日

第404話 思い立って銚子の港 (その3)

銚子を離れてもなお続く日帰りの旅。
コンパクトながら往時の面影を残す佐原を
1時間ほど散策して成田に移動した。

国際空港の町を初めて歩む。
それにしても成田山新勝寺は駅から遠かった。
浅草のつもりでいたから大変だ。
参道の急な坂を下ったと思ったら
本堂前の石段がまたスゴいや。
お年寄りにはムリだろう。
空港を利用したこと数限りないが
とにかくこれまでの無事を感謝して手を合わせた。

参道にやたら多いうなぎ屋はどこもガラガラだ。
イタめし屋やインド料理屋まであったりもするが
みなもぬけのカラで人っ子一人いやしない。
たぶん月曜日のせいだろう。
前日の日曜は繁盛したと思いたい。
地方都市の古びた商店街みたいに
シャッター・ストリートになったら仏さまも浮かばれまい。

参道入口近くの居酒屋に戻ったときは
したたり落ちるほど汗だっくだっく(最近こればっかり)。
行き掛けに目星をつけておいた「ごんべえ」は
店先の貼り紙に誘われたのだ。
ソレにはおおむねこうあった。

*よりみちセット 1000円
 生ビール or レモンハイ 2杯
 冷奴 葉しょうが 牛もつ煮込み

破格である。
つまみトリオもよい組合せだ。
葉しょうがは言わずと知れた谷中しょうが。
安易に枝豆やもろきゅうに逃げないのがいい。
あっさりの2品にこってりの煮込みを合わせている。

暖簾越しに中をのぞくと、小上がりはスカスカだが
カウンターはほぼ埋まっていた。
一つだけ空いたカウンター席に落ち着くとき、
左隣りの女性が自分の椅子を引いてスペースを作ってくれた。
こういう人は少ない、この人はいい人だ。
生ビールを飲みつつ、ヒマに任せてメニューをながめ、
セットの内容を計算したら計1950円、ほぼ半額での提供だ。
隣りの二人連れの女性から流暢な英語が聴こえてくる。
どうやら航空会社のC.Aらしい。
ともにアジア系だがシンガポールや香港の訛りはない。

何かのキッカケで二人との会話が始まった。
隣りの年配者が日本人のAikoサンでL.A在住。
その向こうがコリアンのAnnサンでワシントンD.C在住と判明。
二人で飲むのは初めてだという。
アジア同士のよしみということだろう。

互いの日常で穏便に話題がスタートしたものの、
徐々に竹島(独島)問題からロンドン五輪の日韓サッカー、
はては韓国女子ゴルファーの強靭さにまで発展する。
おかげで予定した帰りの時間を大きくオーバーしてしまった。
とにかく二人ともよく飲む。
Ann なんざ、麦焼酎のストレートに生ビールのチェイサーだもん。
柏か松戸でもう一杯を目論んでいたけれどトンデモない。
まあ、今宵ばかりはヨシとしときましょうかねネ。

=おしまい=

「ごんべえ」
 千葉県成田市花崎町736
 0476-24-3939