2012年9月10日月曜日

第400話 結局は甲府盆地 (その2)

灼熱の甲府盆地にいる。
中央線沿線でベストと称されるとんかつ店、
「美味小家」で並のロースカツを味わっている。
ややっ、コイツは飛びっきりだ。
東京に出店してもベストテン入り間違いナシ。
それもかなり上位にランクされるだろう。
今年の春、みちのく仙台で食べた「かつせい」より上とみた。

生パン粉の特性が際立ち、
ファーストアタックのカリッサクッ感が快適だ。
豚ロースの旨みもじゅうぶん。
余計な見栄を張らず、銘柄豚を回避して正解だった。
おそらく相当なボリュームのハズ、さすれば夜に支障をきたす。
ともに滋味深いソースはどちらかといえば甘口のほうが好み。
茄子入りのきゅうりもみは味覚のリセットに重要な役割を担った。
味噌椀にはキャベツに混じり、甲州名物のほうとうがチラホラと。
うん、うん、この出汁は煮干しだろう。

美味いとんかつの直後に灼熱地獄が待っていた。
時計の針は13時25分を指している。
何としても14時発小淵沢行きをキャッチしなければ・・・。
炎天下を急ぎ足で歩きづめに歩き、というより
かなりの距離を走りもしてきっかり30分、ジャスト・イン・タイム。
甲府駅のトイレへ駆け込み、Tシャツを着替えた。
汗のかき方は甲府ならぬ、甲子園の球児並みだぜ。
(アッ、コレ、球児の藤波と藤川球児をかけてマス)
ふと見た構内の名所案内に愕然とした。
何と「美味小家」が位置する湯村温泉郷まで
駅から五キロと明記されているではないか。
まさか5キロはないと思うが30分でその距離はシンドいや。

小淵沢から小海線に乗り込む。
終点の小諸まで行き、上田か松本に出て1泊しようか・・・。
ここで思い出したのは今朝見たゲンキの無い愛猫のこと。
心の中にモクモクと暗雲が広がり始める。
すると清里で折りよく反対方向の小淵沢行き列車が来た。
小梅線は下手に降りたら戻りが厄介、即刻Uターンを決めた。

そうしてこうして甲府に舞い戻る。
結局は薬局で甲府盆地から抜け出せない。
もっともこの地でとんかつは食ったけど、
大汗かいただけでまだ街を見ちゃいない。
気ままにブラついて酒場の吟味に入り、
独りくつろいで晩酌を楽しみ、日帰りすることを決断した。

飲食店街は駅前を除き、どこもさびれにさびれていた。
閉ざされたシャッターのオンパレードだ。
するとこんなスポットが・・・
浅草の名声は地方にも鳴り響いているらしい。
うしろ姿の女性は路地左手の「B」という名のスナックのママ。
入店して確かめたわけじゃないが、まず間違いあるまい。

「オカジマ」なる古いデパートの地下にもぐる。
客はまばらで品揃えも棚によってはガーラガラ。
鮮魚売場で愉快なのを見つけた。
サイズが極端に異なる目板ガレイ
驚いたことにどちらも値札は498円。
大小見比べると、手前のは奥の倍以上ある。
手に取ったらラクに3~4倍の重みがあった。
ファミリーサイズと独身サイズが同値かや?
東京のデパ地下じゃあり得ない光景に目が点になった。
ったく、大ざっぱなんだから・・・。

なおも散策を続けてアーケードの商店街にぶつかった。
ある1軒の店先で再び目が点になる。
しかもこの衝撃は先刻の目板ガレイをはるかに上回るものだった。

=つづく=

「美味小家」
 山梨県甲府市湯村2-6-22
 055-252-7215