2012年9月24日月曜日

第410話 関八州を見廻って (その3)

猛暑をものともせず敢行した関八州見廻りシリーズの一環、
上州・桐生の町で出くわしたのがこの店舗だ。
ソースかつ丼の「志多美本店」
いつの頃からか町の名物にのし上がったソースかつ丼。
中でもこの店の名前は聞き及んでいた。
ここで遭ったが三年目、機会を逃してはなるまい。
古い家屋や仕舞屋が残る桐生にあって
モダンな一軒屋が否が応でも目をひく。

暖簾をくぐり、引き戸を引き、敷居をまたいだとき、
大宮の「いづみや」でイカフライを食べたことを思い出す。
あらら、昼にイカフライで夜にソースかつ丼かや?
揚げものばっかやん。
これも何かのめぐり合わせ、ドンマイ、ドンマイである。

読者は耳タコでございましょうが生ビールが旨いのなんのっ!
ところが品書きのほうはきわめて限定的。

 ソースかつ丼 玉子かつ丼 玉子丼 親子丼
 ソースかつ定食 かつ鍋定食 親子鍋定食

ザッとこれだけなのである。
つまみが一切ないということは
遠回しに飲む客を歓迎しないという意思表示。
でも飲んじゃうもんネ。
ソースかつ丼4個入り(780円)を所望する。
ちなみに2個アップの6個入りは200円アップの980円。

かつはヒレかつである。
歯を立てるとパン粉ガシガシで食感悪く不満が残った。
肉にジューシーさも乏しい。
醤油ベースにウスターソースを混ぜ合わせたようなタレは
新潟のタレかつ丼よりカツレツにマッチしている。
とは言え、名物に美味いものナシ、
浅草辺りの言い伝えがからっ風の上州にも吹いていた。

再び夜の大宮に舞い戻る。
昼に訪れた「いづみや本店」の隣りの「いづみや第二支店」へ。
すると、
「お客さん、10時までなんですヨ」
「エッ、隣りの本店も?」
「いいえ、あっちはもう少し遅くまでやってますヨ」
ときに午後9時45分、すべるようにお隣りへお引越し。

腹一杯でこれ以上食べられないのだから
真っ直ぐ帰宅すりゃいいものをビールは別腹、ベツバラ。
結局は薬局、ジョッキのお供はコレである。
冷奴は心強いわがシェルター
豆腐に腕押し? 豆腐にかすがい? 子はかすがい?
フフッ、豆腐は酒とわが胃袋のかすがいなんざんす。

そう、そう、読者から”関八州”って何ぞや?の問い合わせアリ。
正式には関八州取締出役といい、
関東八州の治安・風俗を取り締まるパトロール隊のこと。
黒澤明の名作「用心棒」では目明しの沢村いき雄が
八州廻りにソデの下を渡すところを
三十郎の三船敏郎とめし屋のオヤヂの東野英治郎がのぞき見て
笑いをかみ殺している。
ご覧になれば八州廻りの何たるかが一目瞭然でありましょう。

=おしまい=

「志多美本店」
 群馬県桐生市浜松町1-1-1
 0277-44-4693

「いづみや本店」
 *金曜日のブログをご覧ください