2012年9月7日金曜日

第399話 結局は甲府盆地 (その1)

その朝。
行く先を関東・甲信越・東海に地域を絞り、
2~3泊の小旅行に出るつもりだった。
それも各駅停車に揺られてゆっくりのろのろと。
さて、どこへ出掛けようか・・・。
考えあぐねた末に第一目的地を甲府と決めた。
その後、小淵沢から小海線で小諸に向かってもいいし、
中央線を真っ直ぐに、諏訪を経由して松本という手もある。
はては大町に至り、日本アルプスの峰々を仰ぎ見るもよし。

ただ、出がけに気になったのは愛猫のゲンキのなさ。
ひょっとすると夏バテかな? まさかそれはないだろう。
犬じゃあるまいし―。

甲府を選んだのは、前述の地域内の県庁所在地で
酒を飲んだり、飯を食ったりしたことのないのが
唯一、甲府だったから。
街を歩いたことすらなかった。
甲府盆地はすさまじい暑さだろうが
それも盆地で生きる道、暑さをいとわぬ体質に感謝だ。

「美味小家」なるとんかつ屋がすばらしいと聞き、
昼めしはそこに決めていた。
「美味小家」と書いて「うまごや」と訓じる。

甲府着は12時20分。
14時発の電車で小淵沢に向かわないとあとが面倒、
あまり時間がない。
駅から徒歩20分と踏んだものの、
歩いても歩いてもなかなか着かない。
やっとのことで到着したのが12時55分。
もう全身汗だくだく、自分でも汗臭いのが判る。

時間が気になり、さっそく開いたメニューがスゴいや。
特選純粋金華豚ロースの2800円を筆頭に
イベリコ豚、平牧三元豚などが1995円。
実に40種近い品揃えに圧倒された。
こういうときは一番安くて小さいのを選ぶことにしている。
1050円のロースかつ定食をお願い。
あとから入店してきたサラリーマン諸氏もほとんどこれだ。
中にはヒレかつ派もいるけどネ。

最初にテーブルに運ばれたのがコレ。
甘口&辛口ソースに白胡麻と練り辛子
美しい! 実に美しい!
辛子など他人が使用した痕跡がまったくないじゃないか!
こんな繊細なとんかつ屋は生まれて初めてだ。
プレリュードからしてこれじゃ、とんかつは美味いに決まってる。
 
注文から15分後に現れたロースかつ
キャベツの隣りになぜか生のパイナップルが1切れ。
これはデザート代わりではあるまい。
酢豚やハワイ風ポークソテーの前例があるように
豚肉とパイナップルの相性、及び相乗効果を狙っているに違いない。

脂身から一番遠い左端を何もつけずにパクリ。
う~ん、ウ~ン、オトコJ.C.、思わずうなりましたネ。

=つづく=